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2019年9月5日 O2O/スマホ

まさかの青天井!?「楽天ペイ」はポイント還元戦争の覇者となるか

カード大手6社は「値引き」戦略

いよいよ10月1日から、政府主導による「キャッシュレス決済5%ポイント還元策」が実施されます。政府は中小店を対象にキャッシュレス決済をした人に5%のポイント還元(チェーン店は2%)を行う予定ですが、その内容が先日明らかになりました。

※「キャッシュレス・消費者還元事業」ロゴマークは経済産業省の商標です。



まず、クレジットカードとデビットカードについては、月に上限1万5000円の還元を受けられます。この金額、筆者はかなりの大盤振る舞いだと思いました。

PayPayやLINE Payに代表されるQRコード決済のキャンペーンでは、上限1000円とか、最近では300円にまで還元の限度が下がっていましたから、その魅力がどんどん薄れつつありました。いくら還元率が高くても、上限が低ければ何の意味もない。そう利用者も気づき始めていたでしょうから、ここで1万5000円という金額が出ると、皆の目が向くことは確かでしょう。

この金額設定は、「クレジットカードは高額な商品を買うツールだ」と言う共通認識から出ています。この上限いっぱいの金額を受け取るには、カードを月に30万円使う必要がありますが、毎日クレジットカードを利用している人からすれば、30万円はそれほど驚く額ではないでしょう。むしろ、妥当な金額と言えます。

さらに、利便性を高めるために、JCBやクレディセゾンといったカード大手6社は、ポイントではなく「値引き」での還元を始める方針を決めました。

つまり、毎月の引き落とし日に利用金額から5%のポイント相当分を直接差し引くというのです。せっかくポイントを貯めても、有効期限を過ぎて使わない。そうした人は少なからずいますから、確実に皆がお得となる「値引き」は、良い方法と言えるでしょう。またカード会社の立場としても、このほうが後の処理が楽になります。

電子マネーとQRコード陣営の動きは…


一方、電子マネーについては1回のチャージ金額の5%がポイント還元の上限となります。

Suicaは最大2万円ですから1000円、nanaco、WAON、楽天Edyは最大5万円ですから 2500円が、それぞれの上限額となります。
もう1つのQRコードについては、各事業者で決めることになっています。昨年12月4日に始まった「100億あげちゃうキャンペーン」のPayPay祭りを振り返っても、このセクターがポイント合戦では一番熱心と考えられ、これからどういったスキームが出てくるか注目されていました。

しかし、そのPayPay祭りでは、当初3ヵ月間続く予定だったキャンペーンが、「キャンペーン原資となる100億円を使い切った」として、わずか10日ほどで中止になり、利用者の猛反発を買いました。その結果、2回目以降のキャンペーンは大幅にスケールダウンして、「還元額は上限1000円まで」といった地味なものになりました。

また、コンビニの雄・セブンイレブンは、7月1日に満を持して7payを発行しましたが、不正利用が相次いだために、9月いっぱいの終了を余儀なくされたことは記憶に新しいかと思います。 この1年で急成長を遂げたQRコード決済でしたが、セキュリティの脆弱さなどでそのあり方を問われるようになっています(PayPayとドコモのd払いは急遽、8月末に不正利用の補償をすると発表しました)。
それに代わって再び注目を集めているのが、セキュリティに優れたクレジットカードや電子マネーでした。今回の消費増税に関する「キャッシュレス決済5%ポイント還元策」ではこの両者が主役になるだろうと、ついこの前までは思われていたのです。

ノーマークだった「楽天ペイ」が急浮上

前述の通り、ここしばらく不祥事が相次いだQRコード決済。その中で、楽天ペイだけは無傷でこれまで順調に利用者を増やし、加盟店を増やしてきました。その楽天ペイが真っ先に政府のキャンペーンの対応策を発表したので話題となっています。


8月27日にリリースされた「楽天グループにおける、経済産業省のキャッシュレス・消費者還元事業への キャッシュレス事業者としての登録内容に関するお知らせ」によれば、楽天ペイを対象の中小店で利用すると、5%ポイント還元(フランチャイズチェーンなどは2%還元)になります。貯まるのは全て楽天スーパーポイントで、上限は1回あたり2万5000ポイント。月あたりの上限はありません。

この中で注目すべき点は2つあります。ひとつは上限の高さ。1回の支払いについて、2万5000ポイントの還元が上限なので、最大50万円の支払いまでポイント還元に対応しています。もうひとつは月あたりの上限がなく、いくらでもポイント還元ができてしまうということです。

そう見ると、主に家電製品など高額の商品を購入する場合、楽天ペイはクレジットカードよりも非常に便利でお得と言えるでしょう。クレジットカードにとって、楽天Payという強敵がいきなり登場したという形になります。

この楽天ペイの動きは、新しいベンチマークとして業界の手本になると思われます。これまでQRコード決済を先導していたPayPayはもちろん、 最近活発な動きを見せ始めたd払いも黙ってはいないでしょうから、上限2万5000円といった同じスキームで勝負するかもしれません。もしかすると、よりお得な還元方法を出してくる可能性もあります。

肝心の対象店舗が少ない…?



ただし課題もあります。政府のキャンペーンの対象となる中小店(中小企業者のうちの小売業)は、資本金5000万円以下、従業員50名以下の企業となりますが、この条件を満たす店舗の参加がまだ少ないということです。

経済産業省が目標とする中小店は、全国で200万店あるといわれます。その中でこのキャンペーンに手を挙げているのが8月末時点でわずか50万店と、全体の4分の1ほどしかありません。

都内の商店街にあるお店のほとんどがこの中小店に該当しますが、辞退する店がほとんどだそうです。商店の経営者には年配の方が多いので、「スマホの扱いが面倒だ」という声が未だに強くあるほか、「カードの読み取り機の操作がよく分からない」と敬遠する人も多いようです。

それ以上に障害となっているのが、煩雑な事務手続きです。都内の商店街連合会のある幹部も、「キャンペーンに参加するための提出種類が多岐に渡っており、審査も厳しいので決定がなかなか下りない。うちの商店街でも1日で書ききれない位の書類なので、途中で挫折する人が多いのです。パパママ・ストアの高齢の店主などは途中で放り出しました。なんとももったいない話です」と嘆いていました。
せっかく豪華な器を用意しても、肝心の店舗がなければ利用したくても利用できないのが現実です。10月1日にサービスインするのに、最終締め切りは9月初旬までと言われています。それまでに何とか早い処理をお願いしたいところです。

決済市場の主導権を握るのは誰か


しかし、対象となる中小店が少ないからといって、QRコード決済事業者がただ指をくわえて見ているはずがありません。特に家電製品に関しては、中小店にこだわることはないでしょう。家電は量販店中心ですから、もともと政府のキャンペーンから外れています。


そう考えるとむしろ、大手チェーン店を巻き込んだポイント分配合戦に発展する可能性のほうが高いと言えます。1ヵ月単位のキャンペーンであれば、また自腹で経費を出せるなら、誰に遠慮することもありません。

家電量販店、さらにクレジットカード会社を巻き込んで繰り広げられる死闘。もしそうなれば、利用する側としては大歓迎です。しかし、中小店の育成という本来の目的が抜け落ちるわけですから、政府としては座視できなくなるでしょう。こうした点がどうなるかが、この先の問題となるはずです。

これまで、クレジットカード中心で粛々と進むと思われていたキャッシュレス決済5%ポイント還元政策。ところがにわかに雲行きが怪しくなり、10月からSuicaが鉄道乗車に応じてポイントが貯まる交通マイレージ・サービスを開始するというニュースもあるなど、電子マネー、QRコード陣営も巻き込んだ総力戦の様相を見せ始めています。その戦いの勝者が、おそらく2020年の東京オリンピック後の決済市場の主導権を握ることになるでしょう。

いずれにしろ、利用者にとっては上手く使えば、お得にポイント分をザクザク貯めることができる展開になりそうです。しっかり研究して臨むことが求められます。

岩田昭男

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