プレミアムカードだから味わえる体験 イベント歌舞伎・十三代團十郎襲名披露/岩田 昭男
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カードで見れた!歴史的な襲名披露公演
ダイナースクラブカードなどハイクラスカードの魅力は、普通では体験できない特別なイベントに参加できることでしょう。例えば2022年11月、12月に歌舞伎座で開催された「十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」はその代表で、ぜひとも見ておきたい歴史的イベントだったといえます。というのも、團十郎という歌舞伎界の名跡は、江戸歌舞伎の本流である荒事(あらごと)のリーダーとして、また、スーパーマン(正義の味方)として認められているからです。
歌舞伎座での襲名披露は2カ月間にわたって、しかも、昼夜通して行われました。引き続き、「十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行」は2024年10月の大阪松竹座まで行われます。
長年にわたり、歌舞伎や能楽、落語などの公演(主催または貸切)を通じて、カード会員に伝統芸能に触れる・楽しむ機会を提供してきたダイナースクラブは2022年12月15日、歌舞伎座での貸切公演を開催しました。
普段でもなかなか取れないチケットですから、貸し切りで観劇できるというので会員はみなが喜んだのです(私もその一人でした)。
ダイナースクラブの催し物は、歌舞伎や能楽、京都の寺社仏閣でのイベントなど、大規模で古典的なものをよくやってくれますが、大勢人が入るものについては貸切公演が多いようです。
以前はアメックスもそれに近いものをやっていましたが、最近は若者にターゲットをシフトしているので若干少なくなっているようです。私はダイナースクラブのプレミアムカード会員ですから何度かそういう稀有なイベントに参加したことがあります。その中で印象に残っているのがオペラのプラシド・ドミンゴの公演でした。
その時は東京の国際フォーラムで開催されましたが、貸切公演でした。
ダイナースクラブ会員だけが見るオペラですからゆったり見れるし良い場所で見れるというメリットがありました。言葉を変えると敷居が高くて初心者では少し行きづらいそういうイベントを貸切でやってくれるから非常に行きやすいし楽しく見ることができました。
もう一つの印象は、地方にもイベント好きのダイナースクラブ会員が多いということです。歌舞伎を見るために、オペラを聴くために地方から旅行がてら上京しているという人が結構多かったのです。空港ラウンジや宿泊優待などのダイナースクラブのトラベル特典も使いつつ、イベントは貸切公演でのんびりゆったり見れるというのがメリットになっているようです。
襲名披露の素晴らしさ
さて、今回鑑賞した襲名披露公演の話に移りましょう。鑑賞したのは、年の瀬も迫った2022年12月の15日。場所はもちろん歌舞伎座です。
普段は中々ハードルの高い歌舞伎ですが、こうやって機会ができると、行くきっかけになってありがたいですね。
また、貸切公演というのも魅力。歴史ある歌舞伎座ともなると「周りの方々が常連さんばかりだったらどうしよう」と腰が引けてしまうこともありますが、貸切公演ならその心配もありません。気兼ねなく歌舞伎を楽しめるんです。
歌舞伎座の前は、開演一時間前で入口前は大賑わい。
美しい着物に着飾った人も多く、否が応でも気分が高まります。
受付は「ダイナースクラブ」とわかりやすく表示されていて、迷うことはありません。普段行き慣れない場所だと、このようにわかりやすく示してくれると安心します。
私が割り当てられた席は1階の左奥の席でした。正面ではなかったものの役者の表情がよくわかるので、学生時代のように3階の立ち見席で見ていた頃に比べると特等席のようでした。
昼の部のプログラムは3幕構成でした。いずれも今回の市川團十郎襲名を祝うおめでたい出し物となっています。
鞘当(さやあて)
最初の出し物は「鞘当」というタイトルで、緞帳が上がると、舞台いっぱいに桜の花が咲き誇っていて、吉原の廓が描かれた背景が現れました。めでたい襲名披露にぴったりの舞台といえるでしょう。そこは吉原の仲乃町で遊郭のど真ん中。広場には大きな桜があって花を咲かせています。そこへ下手から編笠をかぶって派手な着物を着たコワモテの武士がやってきます(尾上松緑)。不破伴左衞門という侍です。
一方、上手からやはり編笠をつけた名古屋山三という浪人がやってきます。こちらはすんなりとした色男です(松本幸四郎)。隙もない歩き方からこちらもかなりの使い手に見えます。
その2人がすれ違おうとした時、互いの刀の鞘が当たったのが元になって互いの編笠に手をかけて争い始めました。笠を脱がしてみると表情が一変しました。お互いに見覚えがあったのです。この2人はともに佐々木藩に出仕する武士だったのですが、名古屋山三は今は浪人になっていました。
2人は当時から仲が悪く対立していたのです。今も女性関係で争っていました。吉原で傾城葛城という女性をめぐって争っているところでしたから余計ヒートアップしたのです。
2人は取っ組み合いの喧嘩をしましたがラチが明かないと刀を抜いて決着をつけようとしました。それを見た中居のおえん(市川猿之助)が止めに入りましたが、2人は耳を貸しません。どうしても一旦抜いた刀はそのまま収めては武士のメンツに関わると譲らないのです。
そこでおえんは互いの刀を取り替えるようにと勧めました。その言葉に従い自分と相手の刀を取り替えたところ不思議にも相手の刀が自分の鞘にピタリと収まりました。こうしておえんは何とか2人をなだめてその場を収めたのでした。
観劇ノート
不破と名古屋のやりとりなど簡単な芝居のように見えますが、裏に秘められた意味がいくつもあって奥深い作品になっています。その辺まで読み取るには少し時間がかかりますね。今回は十三代目市川團十郎襲名ということで、歌舞伎が新しい時代に入ることを意味しています。そのための襲名披露公演なのです。市川宗家は歌舞伎を代表する名跡であって、團十郎は歌舞伎界をリードする役者といって良いでしょう。すごい歴史があり意味が大きいのです。
なお、歌舞伎は西では和事といわれます。和事というのは色恋中心で、心中物などが人気になっています。なごやかというか関西風で優しいのですが、一方で、江戸歌舞伎は、荒事です。刀や槍を振り回すいわゆるチャンバラですが、こうした武ばった芸が中心になっています。
これは最初からではなくて江戸時代になってから、2代目の市川團十郎が作り上げたものといわれています。武家の伝統があるからそれに則って作り上げたわけです。
有名な歌舞伎十八番と言われるものは7代目團十郎が選んだものといわれています。それ以降この荒事が歌舞伎の主流となっているのです。そして、その中心が市川團十郎というわけです。襲名披露には色々な意味があるのですね。
市川團十郎の襲名披露がここまで話題になる理由
それは1714年(正徳4年)に起こった絵島事件に関係しています。これは大奥の女中頭の絵島と歌舞伎役者生島との恋愛沙汰から幕府を巻き込んだ政治事件にまで発展したのです。この姦淫事件の結果、江戸四座の1つ山村座が断絶を命じられ歌舞伎の火が消えようとしたのですが、2代目團十郎の活躍で他の座はとがめを受けることなく済んだというのです。
このことに感謝してそれ以来、團十郎の襲名披露には多くの座が参加して團十郎に感謝をすることになったというのです。そのため市川宗家との関係が薄くてもこの襲名公演を成功させようと皆が頑張るのです。
ついに團十郎の登場だ
次の出し物の「京鹿子娘二人道成寺」は、白拍子の娘2人(中村勘九郎、尾上菊之助)が出て舞い踊る作品ですが、1番最後に、花道から團十郎が出てきて真ん中で大見得を切ると言う場面があります。これは「押し戻し」という悪霊退散の合図です。ここで観客から一斉に大向こうから「成田屋!」の掛け声が飛びました。團十郎扮する白拍子が、呼び込んだ悪霊を追い返したのです。
ここで新團十郎は強い存在感を発揮しました。
時間にしてみれば後半10分ほどでしたが、その迫力は十分。登場した瞬間から最後まで、観客の目を一手に惹きつけていました。
さらに、團十郎の代名詞である「睨み」は流石の一言。普段多くは歌舞伎を見ない私にさえ、市川團十郎の凄みが伝わってきました。
そして、3幕目の「毛抜」ではいよいよ長男の新之助が出てきて、大きな拍手が起きました。新之助はまだ9歳なのですが、私には15 ~16歳には見えたのです。やっぱり芯が強いようです。
名探偵のように大活躍
物語はお家乗っ取りを狙う悪人たちの謀略を知恵を働かせて阻止するという役でした。結構大人びたものでした。まだ9歳なのに座長的な役割を任されているようでした。物語が進むにつれて、どんどん調子が出て最後はいろいろ仕切って9歳とはとても思えない風格が出ていました。難事件を見事に解決する名探偵のようでした。それを上手にこなしたので観客は大喝采でした。
やはり血筋を大事にする歌舞伎だから、長男への継承をものすごく重視する、ということです。新之助は9歳にも関わらず、自分こそ座長だという雰囲気で場を仕切るわけです。これはただ者ではないという気がして、新之助が演技するたびに私だけでなく観客も大喜びで拍手していました。
そして、この日の演目は終了。
普段はあまり行かない歌舞伎の重要な公演を鑑賞できたのは、とても貴重な経験でした。
ダイナースクラブは前述のように、この他にも、様々な独自サービスを行なっています。
時には還元率や年会費だけでなく、こういったサービスでカードを選んでみてもいいかもしれませんよ。
※「十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行」は2024年10月の大阪松竹座まで行われます。
岩田 昭男
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