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2022年7月15日 岩田昭男が探る

じわじわ浸透中の「後払いサービス」。こんなに違う”サービス格差”に気をつけろ!/岩田 昭男

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クレジットカードの新ライバル現れる

キャッシュレス業界で、このところ話題になっているのが「後払い方式」という支払い手段だ。BNPL(バイナウペイレーター。今すぐ買って支払いは後でという意味)ともいい、カードのいらないアプリで完結できる決済方法として注目を浴び、欧米をはじめ世界各地に普及し始めている。


支持されるのには理由がある。BNPLは、ネットショッピングに強いばかりでなく、分割払いした際に手数料がつかないという特徴を持っている。

とくにこの手数料なしというところが物価高の今、多くの人の関心を呼んでいる。日本でもメルカリやPayPayまで後払い機能を備え出しているので、本家のカード会社も脅威に思い始めているほどだ。

BNPLについて詳しく見ていこう。BNPLはもともとは北欧で始まったサービスだ。世界で共通して、クレジットカードをもてない若者を中心に大きな盛り上がりを見せている。

すでにアップルもBNPLに参入しており、目玉のサービスに育てようと狙っているため、業界を横断して大注目のサービスと言える。

では、日本では、どんな企業がBNPLを手がけているのか。大きく分けると3つの類例がある。

第一は請求業務の代行をやっていた企業が参入するパターンだ。最大手のネットプロテクションズはその典型だ。様々な企業の決済業務を代行していたため後払い作業は得意とする。そのためBNPLとの相性も良かった。

第二はフィンテック企業で、最初からBNPLを掲げていたPaidyなどがある。第三はこれから本格的に進出しようとする三井住友カードやアップル、PayPay、メルペイ、ファミリーマート等の事業者である。

Paidyは「3回後払い」の手数料無料

これらの中で欧米型のBNPLを日本で最も忠実に再現しようとしているのがPaidyだ。Paidyは株式会社Paidyが提供する決済サービスで、ネットショッピングの利用を中心に使われている。

この会社は日本生まれではあるが設立当初からBNPLを目指していたこともあって大手決済会社PayPalの目に留まり、昨年3000億円でPayPalグループ入りを果たしている。

BNPLのPaidyを利用するにはクレジットカードは不要。メールアドレスと電話番号があれば買い物が完結するので、手軽で便利である。

Paidyの後払い決済は主に次のようなサービスである。

Paidyの支払い方法は翌月まとめて支払う仕組みで3種類ある。1口座振替(手数料0)2コンビニ決済(手数料356円・税込)3銀行振り込み(手数料は銀行による)とあるが、このうち手数料のかからない口座振替が興味深い。

Paidyが注目されるのは、「3回後払い」の手数料が無料になる点である。高価な買い物をして翌月一括払いにするには金額が張りすぎるというときには3回に分けて支払う分割払いをよく使うが、そうしたケースで便利といえる。このサービスを利用する条件は、あらかじめ本人確認によって「アップグレード」できる「ペイデイプラス」に加入しておき、3000円以上の買い物で、口座振替か銀行振込を指定した際に適用される。

ではPaidyの審査はどうなっているのか。Paidyでは決済ごとに与信審査が行われ、利用履歴、支払い履歴、利用内容の他複数の要素が総合的に考慮される。クレジットカード業界でいえば途上与信に近い手法である。

こうした与信審査で、未払い率も1から2%と一般のクレジットカード会社並みに抑えているという。また使い過ぎを防ぐために予算設定機能もあり、予算をオーバーするとメールで知らせてくれる。

大手メルカリも動き出す

このPaidyなどに刺激を受けて、まず、動いたのがフリマサイトの大手メルカリであった。衣料品やアイドルグッズの不用品を処分して手軽にお金を得ることができるので特に若者や主婦に人気がある。

そうした利用者の利便性を図るために、メルカリは、2017年11月に株式会社メルペイを作り、メルペイという独自のコード決済を開発してキャッシュレス時代に対応した。さらに2019年4月には、後払いのニーズにも答えようとメルペイ後払いサービスを立ち上げている。

メルペイは、基本的にメルカリ内の支払いに使われるのを想定しているので、メルカリ内の売上金で購入したポイントで支払ったり、登録した銀行口座等から入金した電子マネーで支払ったり、多様なサービスを用意しているが、そこに後払い機能を入れて新しい発展を模索したのだ。

2019年11月にはタイミングよくBNPLの世界的流行が明らかになってきたので、メルペイ後払いサービスを「メルペイスマート払い」に改名して新時代に備えた。さらに2020年7月にはスマート払いの「定額払い」コースも作った。

このようにメルペイは立て続けに、また焦るように後払いを充実させていった。実際メルペイの後払いコースは翌月一括払いだけだったが(もちろんこちらは手数料なしであった)、「定額払い」は一括で払いきれなかった時に何回かに分けて払えるようにするサービスであった。

大きなものを買うときには分割払いは好評だったが、一方で15%の手数料がつくので個人的には決して負担が軽いとは思えない。

「後払い」のはずが、いつのまにか「リボ払い」?

問題はこの分割払いに手数料がつくことであった。15%かかるというからPaidyの3回分割手数料無料サービスとは全く異なるものだ。あくまで私見だが、この「定額払い」は、実質的には「リボ払い」と同じであり、本来のBNPLの分割手数料無料サービスとは似ても似つかないものだったのだ。

これでは「看板に偽りあり」である。手数料無料という真のBNPLを求める顧客にとっては、裏切り行為に等しいといえるだろう。メルカリは若者の支持も厚いサービスだ。そのメルカリを入口として、カードを作ることができない若者が、実質的に「リボ払い」のサービスの沼にはまって動けなくなってしまうリスクも大いにある。

もう一つメルペイの問題点を上げれば、与信のノウハウが足りないことである。ネットプロテクションズなどは本業が請求代行業だったから顧客の返済能力を見極める力は相当なものがある。

SNSで溢れる不満

またPayPayはクレジットカード会社がバックについていて与信能力は申し分ないだろう。それに比べるとメルペイはフリーマーケットのメルカリ出身だから、与信の能力はそれほど高くないといえる。

メルペイはもともとメルカリで取引する人のために作られた決済手段であったとすでに述べた。従って、基本的にメルカリの取引履歴から積み上げていくから他の金融機関のように毎日使うカード履歴から類推するといったことは苦手なのだろう。

実際CIC(個人信用情報機関)などの記録に頼っているとはいってもあまり生かされてはいないようだ。そのため利用者の管理が行き届かず、利用に関する様々なお知らせメールも五月雨式に入るだけ。

上限額の設定も1000円だったものがある日突然に2万円になったり、一貫性がない。そのせいでSNSには、「滞納もないし取引も問題ないはずなのに、急に限度額が大幅に下がった」「限度額20万円から突然100円に」など、メルペイへの不満、注文が溢れている。

せっかくメルカリという若者に人気を集めているサービスを行っているのに、こういった形で信用を失ってしまうのはもったいない。サービスの問題点ははっきりしているのだから、メルペイにはぜひ改善して、真のBNPLの実践を目指してほしい。

岩田 昭男

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