ブラックカードの歴史
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“究極のステータス”と多くの人が認識するブラックカード。ブラックカード、いわゆるアメリカン・エキスプレス社が発行するセンチュリオン・カードが日本に上陸したのは2002年12月のことです。ブラックカード自体の歴史はまだ浅いものですが、ステータスカードの先例を作ってきたアメリカン・エキスプレス社の設立は1850年と古く、貴重品を運ぶ運送業としてニューヨークで誕生しました。1850年というと、日本はまだ嘉永年間で江戸時代の末期にあたる時代です。
■ゴールドラッシュにわく時代に、急行便事業を開始
その頃のアメリカは、サンフランシスコで起きたゴールドラッシュにより、全米から西に向かって多くの人が移動を始めていました。アメリカ合衆国郵政庁(現アメリカ合衆国郵便公社)がすでに荷物(郵便)の配達を行っていましたが、遅配、荷物の制限、輸送中の盗難・紛失など、さまざまな問題を抱えていました。こうした背景の中、アメリカン・エキスプレス社は、西海岸と東部を結ぶ大陸横断駅馬車を活用して、親書や貨物、金銭を“express(急行便)”で運び、業界の先駆者として高い評価を得ました。
事業は好調に展開し、その運輸ネットワークは米国国内だけでなく、カナダ、メキシコまで広がっていきました。
■「マネー・オーダー」、「トラベラーズ・チェック」の発行
当時のアメリカン・エキスプレス社では、金融サービスはまだ行っていませんでしたが、常連の顧客は銀行でした。銀行から預かった株券、手形、通貨などの輸送を通し、金融商品に着目していきました。
そして1882年には、世界で初めてマネー・オーダー(送金為替)業務を開始。これは欧州にもない安全性の高いサービスだったために、急速に普及し、金融事業に進出する道を開くことになりました。1891年には、当時の社長がヨーロッパで現地通貨の調達に困った経験をきっかけに、トラベラーズ・チェックを開発。高い安全性と流通性で成功を収め、世界的な企業へと発展しました。
■第一次世界大戦下で築いた“信用”
その後、世界を巻き込む第一次世界大戦が勃発します。ヨーロッパで戦争が拡大するにともない、ヨーロッパの銀行は、外国の信用状などに対する支払いを停止しました。現地に残された多くのアメリカ人はパニックになり、アメリカン・エキスプレスの事務所に押し掛けましたが、そんな状況下でもアメリカン・エキスプレスはすべてのトラベラーズ・チェック、マネー・オーダーを現金化し多くのアメリカ人を窮地から救ったのです。また戦争中は、英国の公認エージェントとなり、ドイツで捕えられた英国捕虜に親書や小荷物、お金を届けるという業務も行いました。これらの実績により多くの信頼を獲得することになりました。
1915年に入ると、海外旅行に行く米国人をサポートする事業を強化します。旅行代理店的な色彩を強めるとともに、ロンドン、パリなど海外の旅行ネットワークの整備を行いました。横浜に日本初の事務所が開設されたのもちょうどこの頃、1917年のことでした。
戦後になると、米国では海外旅行の大ブームが到来しました。旅の手配に本格的に乗り出すとともに、トラベラーズ・チェックやマネー・オーダーの発行を通して、多くの収入を得ました。
その後、第二次世界大戦に突入した時も、第一次世界大戦での経験を元に、資産の保全に努め、撤退せざるを得ないその直前まで事業を行い、難局を切り抜けました。
■1958年、アメリカン・エキスプレス・カードが米国とカナダで発行
1958年には、ついにクレジットカード事業への参入です。アメリカン・エキスプレス・カードを米国とカナダで発行しました。これが今につながるアメリカン・エキスプレス・カードの第一号です。すでに世界的な旅行代理店として、世界中に旅行者支援のネットワークを張り巡らせていたこと、さらにトラベラーズ・チェックの発行により、金融事業者としての側面を強めていたこともあり、クレジットカード事業への移行も極めてスムーズに行われました。
この後、1966年にゴールドカード、1984年にプラチナ・カード、1999年にはセンチュリオン・カード(ブラックカード)が発行されました。
■日本での第一号はゴールドカード。ブラックカードは2002年に登場
一方日本における事業展開は、先にも述べた1917年に横浜に事務所が開設されて以降、1954年にはアメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社が設立され、1974年に日本円のトラベラーズ・チェックが発行されました。その後1980年、日本で最初のゴールドカード「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」が登場し、続く1983年に「アメリカン・エキスプレス・カード」が、1993年に「プラチナ・カード®」が発行されました。プラチナ・カードという名称の商標登録はアメリカン・エキスプレスが持っています。「センチュリオン・カード」(ブラックカード)が日本にやってきたのは2002年のことです。
実に創業以来、約150年の年月を経てブラックカードは誕生しました。二度にわたる世界大戦を経ながら、センチュリオンに象徴される「安心・安全」、「信頼」、「プロテクション」を確固たるものにしたのです。こうした歴史の重みが至高のカードを世に送り出した、と言えるでしょう。
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