岩田昭男が「探る!」共通ポイント・業界ルール「一業種一社」の壁
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10月1日から楽天がRポイントカードで共通ポイント事業に参入した。共通ポイントというのは業種の異なる店舗で共通して使えるポイントサービスのこと。店舗側は、全く違う業種の客を相互に誘導することで、新規の顧客獲得が見込める。利用者にとっても、一社にこだわることなく、生活の導線にある店舗で効率よくポイントを貯められるというメリットがある。
二大陣営と新興勢力とのせめぎ合い
現在、共通ポイントは、Tポイント(提携ヤフージャパン)とポンタ(提携リクルート)の二大陣営が凌ぎを削っている。先行しているTポイント陣営は、会員数5000万人、店舗数7万5000店、主な加盟店はTSUTAYA、ファミリーマート、ガスト、ENEOSなどを擁する。対するポンタ陣営は会員数6200万人、店舗数2万3400店、主な加盟店はゲオ、ローソン、昭和シェル、ケンタッキーフライドチキンなどとなっている。そこに大丸・松阪屋、出光興産、サークルKサンクス、ダスキンなど12社・団体の加盟店を持ち当面全国約1万2600店舗(最終的には1万3300店舗まで増える予定)で攻勢を掛ける楽天が割り込もうとしているので、競争はますます激しくなりそうだ。
共通ポイントをめぐる水面下での攻防
それにしてもなぜ今になって、共通ポイントなのだろうか。それは、小売業者たちがネットとリアルをまたぐO2O(オンライントゥーオフライン)の大切さに気付いたからだ。ネットショッピングの隆盛に伴い、小売業はネットとリアルの両方を押さえ込むことが最も大切といわれる。その際に顧客囲い込みの重要なツールとなるのが共通ポイントなのだ。
そのために、Tポイントはヤフージャパンと連合を組んで、昨年7月にはヤフーポイントを統合してしまった。その結果、Tポイントはリアルだけでなく、ネットの中でも縦横に使える強力なポイントとして生まれ変わった。それを見ていたポンタは、じゃらんやポンパレなどネットに強いリクルートと提携を結び来春にはポイントの統合を果たそうとしている。Tポイントとヤフージャパンの成功モデルを追いかけてみなが動き出しているのだ。
注目すべき楽天の大躍進
楽天もそのひとつだ。ネットで成功した楽天はリアルでは出遅れ感があった。その弱点を補うために、リアルへ単独で乗り込もうとしている。しかし、その様相は昨年あたりからだいぶ変わってきた。楽天カードのテレビCMの効果で、カード会員が急増し、現在は700万~800万人程度になっている。メジャーカードの条件といわれる1000万会員まであと一息のところまで来た。電子マネーのEdyも長年赤字を垂れ流してきたが、楽天が面倒をみるようになってから黒字転換して好調に推移するなど、リアルでも健闘しだした。そして、その追い風をバネにして、Rポイントカードも1年間かけて加盟店の獲得をすすめてきた。その結果、1万3000店舗近くの加盟店を確保することができた。ゼロからの出発としてはよくやったといえるだろう。
立ちはだかる“本当の敵”
しかし、それでもできなかったのが、「リアルの壁」の打破である。つまり、加盟店の質を高めることだ。必死で大丸・松阪屋、出光興産などをくどいたが、業界ナンバーワンといえる企業は数えるほどしかいない。大半は二番手、三番手の企業になってしまった。これは楽天が好んで選んだ結果ではなく、業界のルールが邪魔をしているのだ。それが「一業種一社」制だ。
Tポイントが最初に立ち上げた時に業界の秩序を乱さないために同業他社との競争は避けようと、このルールを作った。その結果、Tには各業界の有力企業が集まり、二番手のポンタは結果的に二番手企業を集めることになった。そこまでは十分に商売ができる、しかし、その次となるとそうはいかない。三番手故に、楽天には目ぼしい優良企業は残っていなかった。先行者のおこぼれを楽天が拾うという構造になっているのだ。したがって、この関係を是認する限り、楽天はいつまでたってもリアルでの盟主にはなれない。それが分かったから、三木谷会長は記者会見で「わがグループは一業種一社にはこだわらない」と繰り返し述べるようになっている。掟破りである。どの企業にも門戸を開けているといっているのだ。
業界ルールを切り崩せるか?
楽天に勝機があるとすれば、このルールを撤廃させて、自由競争に持ち込み、トップ企業に二つ、三つの共通ポイントを受け入れさせることだ。それをしないといつまでたってもリアルで三番手に甘んじ、Tポイントはトップを快走し続けることになる。後発組がトップを狙うには、同じ土俵に乗っては駄目である。積極的に下克上を仕掛けないといけない。そう考えたから三木谷会長は公の席で「一業種一社」のルールに乗らないと宣言しているのだ。
しかし、店舗側とするとどうだろう。9500万人いる楽天市場会員の送客を受けられるのは魅力である。また、利用者の立場からしても利用できる店舗数が増えるのは大歓迎である。そう考えると、三木谷会長のいうことは間違ってはいないと思える。このルールが崩れるのはそれほど先のことではないかもしれない。
実際、すでに何社かは二つの共通ポイントを受け入れる検討を始めているとも聞く。ある日コンビニに行くと、Tポイント、ポンタ、それにRポイントの三つが利用できるようになっていた、なんてことになりかねない。だが、ルールがなくなり自由競争になった時には、また再び加盟店獲得競争のゴングが鳴ることになるだろう。
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