岩田昭男が「探る!」。「シニアのカード管理術 」佐倉市消費生活センター講演レポート
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更新日:2020年6月25日
(公開日:2014年11月25日)
2014年11月15日千葉県佐倉市消費生活センターで行った講演をレポートしたい。テーマは「気をつけよう各種カードの管理方法」。会場は佐倉市駅前にある「ミレニアム センター佐倉」の3階会議室。午後1時30分からのスタートだった。
到着した時にはすでに会場には参加者が入っていた。ほとんどが60歳以上のシルバー世代で男性より女性の方が多かった。
講演の内容は以下のようなものだった。
●決済多様化時代の幕開け
・クレジットカード
・デビットカード
・プリペイドカード
・電子マネー
・スマホ
●ここに気をつけよう
クレジットカードの仕組み
講演は2時間。地方の消費生活センターで講演するのは久しぶりだ。こんな時に最初からデビッカードやプリペイドカードの話をだすと、シルバー世代の人たちは引いてしまうのではないかと思い、身近なクレジットカードから話すことにした。
まずクレジットカードの仕組みや種類について話をした。Visa、MasterCardのネットワークを説明しながら、キャッシュレスでモノが買える仕組みを解説。続けてデビットカードやプリペイドカードも同じ仕組みを使っていることを紹介した。そうしておくと、後でデビットカードやプリペイドカードを説明するときに理解しやすいと考えたからだ。
実際、最近登場したデビットカードやプリペイドカードはどれも国際ブランドのインフラを使って取り引きする仕組みになっている。「三菱UFJ-VISAデビット」、「au WALLET カード」、「キャッシュパスポート」などはみなそうだ。決して新たにインフラを作って展開しているのではない。仕組み的にはクレジットカードの「弟分」であり、「妹分」なのである。
デビットカードとプリペイドカード
それから本題のデビットカードの説明に入った。デビットカードはクレジットカードと違って、即時払い。世界3000万以上といわれるVisa、またはマスターの店舗で買い物ができる。その代金は口座から即座に引かれるために、引き落とし金額は口座にある金額の範囲内となり、使いすぎの心配はない。また銀行やカード会社に立て替えてもらうわけでもないので、借金の心配もない、ということを力説した。
こういう説明をしているうちにザワザワしていた会場がシーンと静かになった。参加者がデビットカードに関心をもったようだ。それはそうだ。審査がなくて、クレジットカードと同じ数の加盟店を使えるのだから、すぐにもてて便利なカードだとみなが気付いたのだろう。
次は、プリペイドカードの解説だ。プリペイドカードは前払いである。あらかじめカードに入金しておいて加盟店で買い物に使える。こちらも使いすぎる心配もないし、借金にもならないから関心が高かった。
“一般店舗で使える汎用型”、“海外旅行で使える海外専用型”、“ネットで買い物のできるネット専用型”、三種類のプリペイドカードを紹介した。中でも参加者が反応したのは、海外専用型のプリペイドとネット専用型のプリペイドを説明しているときだった。
海外専用型プリペイドカードは、海外旅行や留学・長期滞在に便利なカード。海外のVisa、またはマスターの店舗で使えるだけでなく、お金が必要な時に現地のATMから現地通貨を引き出すことができるのが特徴だ。自身の海外旅行、子どもや孫の海外留学時の送金用にも使える(代理人登録の手続きが必要)。海外留学での多額な入学金や授業料、寮費など、高額の送金もできるから心強い。JTBの「Money T Globalカード」のように年間の入金限度額が1000万円もあるカードもある。
海外で使えるプリペイドカードの多くは、買い物時の為替レートが適用される。しかし中には、ジャックスの「Gonna」やトラベレックスの「キャッシュパスポート」のように入金時の為替レートで換算されるものもある。これらのカードでは、人金時のタイミングを見計らうことによって為替リスクを軽減することができる。今のように円安傾向が長く続いている時には有利になる。こうした点を説明したところ、とくに年金暮らしで投資信託や外貨預金に親しんでいる人たちに大いに受けたようだ。
ところが、話がネット専用プリペイドカードになると、その表情が険しくなった。ネット専用プリペイドカードは数種類でているが、いずれの反応もさえない。「動画サイトの料金が未納になっているので、手持ちのネット専用プリペイドカードでコンビニで支払え」といわれて26万円を詐取された男性がいたという事件が新聞に掲載されたので、警戒したのかもしれない。同じプリペイドカードでも種類によって参加者のリアクションに天と地ほどの違いがあるようだ。
「70歳をすぎて発行してくれるクレジットカードはないのか?」
「70歳をすぎて発行してくれるクレジットカードはないのか?」これは、講演の終わりに設けた質疑応答でのこと。70歳すぎの女性の質問だった。
彼女は70歳になったのを機会にもっていたクレジットカードをすべて解約した。生活をシンプルにしようとしたのだ。ところが、なくしてみると、それまでは当たり前にできていたことが何もできなくなり、困ってしまったという。
たとえば、通販で化粧品を購入していたが、クレジットカードがなくなると、その支払いができなくなってしまった。しかたなく代引きに換えたが、これが不便だった。配達される時間に自宅にいないと化粧品を受け取れない。一人暮らしで外出がちの女性にとっては相当なストレスとなっているそうだ。
他の買い物でも同じで、何気なくクレジットカードで買い物をしていたので、カードがなくなると急に現金が必要になって、オロオロするばかりだという。常にサイフにお札を入れておかなければいけない。そのために毎日のようにATMコーナーに行くようになって、これも重荷になっているそうだ。今さらながらにクレジットカードの大切さを知ったわけだが、再びカードを持ちたいと思い、申し込もうとするが、審査に落ちた時のことを考えると恥ずかしくてそれもできない。『だいたい年金暮らしのシニアに新しいクレジットカードを発行してくれるわけがない』、そう信じているから、最近はすっかり諦めていたそうだ。しかし、この日の話を聞いて、デビットカードなら自分でももてそうだと思い、希望が湧いてきたと感謝してくれた。
女性はこれからデビットカードを使って、以前のように自分のやりたいことをやってこれからの人生を楽しく過ごされるとしたら、講演が役立ったということだろう。シニアの方たちとの交流で爽やかな気持ちにさせられながら、講演の幕は閉じられた。
カードの便利さはどんな年代であっても享受できるものだ。自分にあったサービスを選ぶことの重要性をいまさらながら感じさせられた。
<講演を終えて。岩田の眼>
この講演会で分かったことは、日本人の堅実さだった。とにかく日本人は借金になるのが嫌で、クレジットカードは便利と知っていながら深入りしない。ところが、プリペイドカードやデビットカードになると、みなが食いついてくる。自分のお金の範囲で始末できるからである。責任感が強いといえば良いように聞こえるが、実際は臆病だからそういう考え方をするのだと私は思っている。でも、そのおかげで、家計が健全でいられるという側面もあるように思える。
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