岩田昭男の上級カード道場〜ポイント経済圏、プレミアムカード、カード上級サイト〜

2020年4月22日 岩田昭男が探る

【コロナ危機を乗り越える①】これが見本!コロナ以後 のキャッシュレス戦略/岩田 昭男

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還元率最大50%が無制限

大阪府は国の緊急事態宣言を受けて、「外出自粛者支援策」として、飲食宅配代行サービスの「Uber Eats(ウーバーイーツ)」や「出前館」などを利用して1000円以上の出前を頼むと500円分のポイントを還元するキャンペーンを開始した(4月15日~5月6日まで)。


支払いをキャッシュレス(電子決済)で行うことが条件だが、還元ポイントは次回の出前で値引きされる。そのため、リピーターが増えると期待されている。

改めて、ウーバーイーツを例に利用の形を説明していく。対象となるのは大阪府内の店で、調べてみると、ファーストフードから中国料理、韓国料理、タイ料理、日本料理、定食屋、寿司屋など、ほとんどの料理ジャンルがカバーされている。

利用者は、まずサイトに登録したあと、料理の配達に対応する大阪のレストランやカフェを検索する。それから、好みの料理やデザートを選んでキャッシュレスで購入(注文)する。

すると、その情報が店に送られて、シェフがすぐに調理にかかる。出来上がった頃にウーバーイーツの配達人が自転車で店に行き、料理をピックアップして利用者に届けてくれる。その間、約50分ほどだという。

支払い方法は、クレジットカード、デビットカード、LINE Pay、Apple Payなどである。いずれの方法であっても、1000円以上の利用で、500円分のポイントが貯まり、次の出前の利用時に500円分が割引になる。しかも、回数は無制限だ。

東京の政治家とは大違い!? 商売上手な大阪らしいアイデア

この大阪府の取り組みは、自宅に引きこもっている人には朗報ではないだろうか。労せずして毎日バラエティに富んだ料理を格安料金で楽しめるからだ。

「出前ポイント」とも言えるこのサービスはなかなかユニークであるが、この話が広がったきっかけは、4月9日の大阪府吉村洋文知事の記者会見であった。


新型コロナウィルスの感染拡大を一向に止めることのできない、東京の政治家たちのあまりにも遅すぎる対応に多くの国民が振り回されて疲弊しきっているだろう。

そこに、吉村知事が外出自粛をうまく利用する画期的なサービスを発表したものだから、少し大げさに聞こえるかもしれないが、真っ暗闇の中に一筋の光が差し込んだように筆者には思えた。

とりわけ、ウーバーイーツのポイント還元率50%が筆者には魅力的であった。50%ポイントの最大の利益享受者はもちろん利用者となるが、出前も増えるので大阪府内の飲食店の売り上げもあがる。

配達業者も業績アップになるし、自治体もキャッシュレス促進を図れるので、すべての関係者(プレイヤー)が利益を得られる仕組みになっている。これは素晴らしいというより他ない。

やはり、若い知事の柔軟な発想から生まれた事業だから勢いがある。出前の仕組みとポイント活用など庶民の生活をよく知っているからこそ出てくるアイデアで、いかにも商売上手な大阪の人らしい。

すでに世界は大きく変わった! キャッシュレスが当たり前の時代へ

それにしても、吉村知事の目配りの効いたこうした考えが出てくる背景には何があるのだろうか。ひとつは、コロナによって世界の状況が大きく変わったことが大きいと筆者は考えている。

これまでは何事も人と会って判断する、決めるという直接的な世界だった。それが今年から新型コロナウィルスに感染しないのが最良の生き方となった。そのために「人と会わない」、「近寄りすぎない」、「大声を出さない」といった非対面的な生き方が、老若男女問わず、社会のあらゆる領域で、高く評価されるようになった。

仕事をする時でも、在宅勤務でオンラインのディスプレイ画面上で会社の上役や同僚と会議する「テレワーク」が普通になっている。


子供たちは休校の間、「オンライン授業」で勉強することになる。直接対面して生徒に飛沫を飛ばしてウィルス感染させることのないように、先生は画面ごしに生徒に指示を与えたり、答えを聞いたりするようになったのだ。


コミニュケーションの仕方が大きく変わりつつあると言えるだろう。
これまでは、物を買うときにも、長い列を作って、ウィルスまみれの小銭のやり取りをし、無意識にウィルスに感染したり、感染させたりしていた。それも、電子マネーなどによる非接触のキャッシュレス決済であれば、そんなリスクがなくなる(しかも、ちょっぴりポイントがつくこともある)。

吉村知事の「庶民的な視点」

こうした世の中の変化を素早くキャッチして、吉村知事は外出自粛とキャッシュレス、飲食店の売り上げアップ、配達事業者の業績向上、それに自治体のキャッシュレス推進をうまく組み合わせて万人が納得する仕組みを作ったのである。

昔からある「出前」という日本独自のサービスと21世紀的な「キャッシュレス」、それに生活の前提になりつつある「非対面」。この3つが上手く組み合わさったサービスこそが、これからのコロナ時代にふさわしいものになるのではないだろうか。

加えて、吉村知事の評価すべき点は、“庶民的な視点”である。

緊急事態宣言で外出自粛が要請されると飲食店には誰も来なくなってしまう。そうなれば売り上げが激減し倒産する店が増える。これを防ぐにはどうすればよいか。

それを考える中で、知事はピザの宅配(出前)を思いついたのではないか。宅配ピザなら客は、店に行くことなく、自宅にいながら好きな料理を注文して食べられる。

だからこそ、出前をうまく使えば非対面は解決すると気がついた。そして顧客を強く結びつけるために還元率の高いポイントをつければ絶対成功する。

これらはカードでポイントを貯めている人なら誰でも分かることだ。そのために最終的に還元率を最大50%ポイントにしたのではないか。しかも、ポイント交換など考えず、出前メニューに絞り込むことで、ロスを減らして還元率を高くすることができたのだ。

SNSでも賞賛の嵐

しかし、一番の工夫は、ポイントを飲食店につけるのではなく、ウーバーイーツや出前館に付けたところだろう。ここが新しいところで、注目点だ。大手の飲食宅配代行サービスなら、2000店舗以上の飲食店をカバーしているから繰り返し使われるようになるのだ。

こうした発想が一度に出てきてバタバタと組み立てられ、出来上がったのではないか。

それが出来るのはやはり毎日の暮らし、女房子供の様子を見ていて学んだ体験があるからなのかもしれない。やはり庶民目線を持ち続けることが、商売でも政治でも一番大事ということではないだろうか。

4月9日に大阪府知事の「出前ポイント」の記事がネットニュースで配信されると、たちまちSNSでは賞賛の嵐となり多くの人の共感を呼んだ。その一部を紹介しておこう。

「国と違いコロナと本気で戦ってくれているのが伝わってくる」
「来週の水曜日(4月15日)にはスタートさせるとおっしゃっていた。仕組みもスピード感も本当に凄いと思う」
「消費も進むしお店もメリットある。今必要な政策やね」


世の中全体が大きく動きつつある今、これまでのルールが次々と新しいものに塗り替えられている。そうした時代には前例に囚われない頭脳と行動力こそが求められているのであり、それこそがこれからのリーダーには必要なものといえるだろう。吉村知事の奮闘がはっきりとそれを示している。

岩田 昭男

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