新型コロナと「7月の壁」が日本を現金主義に戻す?ポイント還元事業はこう組み替えろ/岩田 昭男
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日本で盛り上がってきたキャッシュレスも、新型コロナと「7月の壁」に阻まれようとしています。どうすれば今後もキャッシュレス化は進むのか。現状の問題点と今後の提言をまとめました。
コロナショックが日本の経済・金融をぶっ潰す
まさか、新型コロナウイルス感染がこんなにも猛威を振るうなんて、1か月前に誰が考えたでしょうか。「桜が咲いて暖かくなれば、他のインフルエンザと同じように自然に消えるだろう」と安倍首相やトランプ大統領はタカを括っていたようですが、3月になってもその勢いは止まらず、イタリア、フランス、スペイン、イラン、米国など瞬く間に世界中に広がりました。
これを受けてWHOのテドロス事務局長もパンデミック(世界的流行)を宣言し、「新型コロナウイルス感染は中国から欧州を中心とした新しい段階に入った」と指摘しました。
日本でも小中高校の休校や集団イベントを中止するまでに感染が拡大しつつあり、テレワークや時差出勤、減税、休日補償、現金供与など経済・金融的な単語がよく飛び交うようになっています。
そこで当メルマガでは、新型コロナウイルス感染がキャッシュレスにどのような影響を与えているかを、特に最近注目を浴びているポイント還元事業にスポットを当てて、整理してみたいと思います。
ポイント還元事業の中身をざっとおさらい
ポイント還元事業は、キャッシュレス促進を目的に作られましたが、同時に消費増税による景気悪化を防ぐ意味合いももっていました。3月11日現在、対象となる資本金5,000万円以下の中小店舗は全国で約200万店あると言われますが、そのうちの105万店がこの事業に参加する登録加盟店で、クレジットカード、電子マネー、QRコードなどのキャッシュレス決済を受け入れて、5% (フランチャイズで2%)のポイント還元を行っています。
事業は、昨年10月1日に始まり今年の6月30日まで続く予定です。あと3ヶ月は続くわけですが、その間利用者は登録加盟店でキャッシュレスで利用すれば、5%のポイントをもらえて、貯めたポイントは景品に変えたり、引き落としの時に相殺されたりします。
登録加盟店はずいぶん有利だ
一方の登録加盟店(小売店)はもっとメリットがあります。クレジットカードを受け付ける端末をほとんどタダでもらえます(定価は7万円ほど)。その他にカード会社に払う手数料が普通は3%から7%かかりますが、2.17%ほどとされており、大変に優遇されます。
もちろんポイントの原資は5%かかりますが、これは税金が当てられますから、店側の懐は全く痛みません。
ですから、小売店にとっては良いことずくめなのですが、2月に入ってからのコロナ・ショックで、客数が激減したこともあって、飲食店、旅行業者、インバウンド関連のサービス業、交通業、ホテル業、百貨店、映画館等の経営は日々逼迫しつつあります。
7月の壁をどう克服するか
特に、小売店は2.17%の手数料で済んでいたものが、7月からは3%とか6%とかに跳ね上がるので、店の儲けがまるまる吹き飛ぶことになります。そのため、今心配されているのが6月いっぱいで離脱する店がたくさん出て105万店あった登録加盟店が半分にまで減ったりしないかと言うことです。
というのも、小売店にとってキャッシュレス扱いにすれば、経営を直撃するリスクが出て来るからです。現金なら毎日の収入はそのまま次の日の仕入れに使えて経営に不安はないのですが、クレジットカードの入金は15日から1ヵ月後になるので、タイムラグがあって、資金がショートする恐れがあります。
年度末ではそこが一番怖いところです。入金が間に合わなくて倒産なんてことになります。
消費税率ゼロという案が出てきた
そうしたこともあって、小売店に対する目玉となる施策が求められていますが、現在の政府の打ち出す戦略では、なかなか「これだ」というものは出てきていません。それでも自民党の若手議員からは消費税の完全撤廃と言うアイデアがでてきました。当分の間、消費税をゼロにするほか、30兆円規模の補正予算案を編成することなどを求めていて、財源は国債の発行で捻出するとしています。
西村経済再生担当大臣に提言書を出しました。これは応援したい。
ポイント還元事業の率を上げる案
その他にも、ポイント還元事業の仕組みをそのまま使って、さらに還元率を上げようとする動きも出ています。これは3月14日のFNNニュースで報じていたものですが、現在の5%を10%から20%に引き上げるアイディアで、これも与党の方から出ているようですが、10%とか20%とかになればまとまった買い物すればずっしりお得感があるので効果は抜群でしょう。
消費税率をゼロにすると同時にポイント還元制度を引き上げて活用すれば買い物をしないと損をすると言う状況が生まれるのでにわかに騒がしくなる可能性もあります。
しかし、その一方でこのニュースはテレビで報道されすぐにネットニュースで拡散されましたが、わずか2~3時間後にはすべてのネットニュースが削除されました。
どこかから圧力がかかったのでしょうか。それとも誤報だったか、気になるところです。
東京オリンピックは本当に開催されるのか
さらに、別の要因も関係してきます。7月開催の東京オリンピックの雲行きが怪しくなっています。世界的なコロナの流行で、7月開催が危ぶまれており、中止か延期と言う声がIOCなどから上がっています。「絶対開催します」と言うのは政府関係筋と小池東京都知事くらいなものです。今のままでいけばおそらく中止か延期になるのはほぼ確実ではないでしょうか。
これがポイント還元事業にも大きく影響してきます。
ポイント還元の終了が6月30日に設定されたのは私が思うに7月24日に東京オリンピックが開催されるからです。
7月からはオリンピックの本番が始まるわけですからその期間は試合をしっかりみてくれ。もうポイント還元は必要ないと言うことでしょうか。しかし肝心のオリンピックが中止になってしまったのではポイント還元事業のスケジュールにも再考が必要になります。
実際はカード会社との取り決めで7月から手数料率を上げるという約束があったと言いますが、今回のコロナのような突発的な事件があったときはポイント還元事業の期間延長はやむを得ないと思います。
ポイント還元事業の延長を考えよう
そう考えてくると、6月30日に無理やりに終了する必要は全くなく、7月・8月も続けてやっていいはずでしょう。さらに8月で終わるのでなく、9月から始まるマイナンバーカード(総務省担当)のポイントサービスに経産省のポイント還元事業を合流させるという形で2本立てで展開することも可能です。
こうすれば長い間ポイント還元ができますから多くの人がキャッシュレスに馴染むこともできるでしょう。そして最終のゴールは来年の3月31日までとなります。
利用者にとっても消費税が大幅な減税になり、中小小売店で買い物すれば10%から20%のポイントが付くとなれば、有利な買い物になるでしょう。
こうしたところでいろいろ手を尽くせば、コロナが終息した後で、日常生活に帰るのもそう難しいことではなくなるでしょう。
マイナンバーカードの新しい使い方が見つかる?
9月にはマイナンバーポイントにポイントが付くようになりますが、マイナンバーカードについても、台湾でコロナ感染者のトレースに個人情報カードが力を発揮したと言われるので日本でも新しい使い方が見つかるかもしれません。このように状況が刻々変わる中で、仕組みもそれに合わせて柔軟に修正させるのが良い方法と言えるでしょう。
それがコロナにも効くし、キャッシュレスにも効くし、さらに景気も良くなるのであればこれが最高ではないでしょうか。
東京オリンピック中止なら「7月の壁」は解決か
オリンピックが中止か延期になれば、7月の壁の問題は解決するのではないでしょうか。7月に無理にポイント還元のゴールを設定する必要がなくなるので、その間も還元を続けることができるというわけです。
そうなると、9月のマイナンバーカードとの関係も面白くなってきます。これからもまだまだキャッシュレスは激しい動きをみせてくれそうです。
岩田 昭男
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