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2020年1月8日 岩田昭男が探る

マルイ・エポスカードが「オタクの愛で絶好調」の理由

ここ2、3年、女性向けのアニメブームは急速に盛り上がっていて、特に女性向け恋愛アドベンチャーゲームやBL(ボーイズラブ)と呼ばれる若い男性同士の疑似恋愛を扱った作品が人気になっています。

実はこの影響がクレジットカード発行の現場にも確実に押し寄せていて、キャラクターカード(アニメの主人公やゲームの登場人物をカード券面にあしらったカード)が複数のカード会社から発行されています。

その中で、トップを走るのはマルイの発行する「エポスカード」。『週刊少年ジャンプ』の人気マンガ『銀魂』のキャラクターを取り込んだ「銀魂エポスカード」やゲーム由来の『うたの☆プリンスさまっ♪』。「テニスの王子様」など人気漫画やゲームのキャラクターのカードを次々と発行して話題をさらっています。

時価総額6000億円を突破

そのおかげもあって、「エポスカード」を発行する丸井グループの業績が好調です。

株式会社丸井グループの2019年3月期の連結決算は、売上収益(売上高)が2514億円で前年比5%増、純利益が253億円で同21%増でした。エポスカードの会員数は688万人で5%増となっています。


この勢いは今も衰えず、2020年3月期の連結決算は売上収益2590億円(前年比3%増)、純利益275億円(同9%増)が見込まれています。純利益は1991年度以来の高利益となっています。
これらの数字から、丸井グループの業績がここ数年、右肩上がりであることがわかります。株価にもそれが如実に表れていて、年初来の高値を付けた12月11日は2703円で取引を終えています。時価総額は6000億円を優に超えました。

これらを百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングスと比べてみると同じ日の三越伊勢丹ホールディングスの終値は1012円で時価総額は約4000億円。いずれも丸井グループが大きく上回っているのです。

「アニメ事業部」が大活躍

しかし、この丸井の急成長を支える力になっているのが「エポスカード」であることは意外に知られていません。いや、まったく知られていないといってもよいでしょう。
エポスカードには大きな特徴があります。それはアニメやゲームと積極的にコラボし、さまざまなキャラクターカードを発行していることです。キャラクターカードを発行することで、アニメのファンやゲームのユーザーを囲い込むことができると見ているのです。

丸井は2010年頃からアニメやゲームとクレジットカード事業との連携を考えていましたが、2015年に行ったエポスカード会員のアンケート調査が大きな転機となりました。アンケートに応じた会員のうちの61%が「アニメが好き」、25%が自分は「アニメおたく」と答えていることがわかったからです。
このアンケート結果を受けて、2016年に丸井は「アニメ事業部」を発足。キャラクターカードの発行や関連グッズの販売に本格的に乗り出しました。

2017年には前述の通り、『週刊少年ジャンプ』の人気マンガのキャラクターを取り込んだ「銀魂エポスカード」、2019年にはこれまた同誌に連載中の超人気マンガ『ONE PIECE』のテレビ放映20周年を記念して「ワンピース エポスカード」を発行しました。
またその間、映画『シン・ゴジラ』とコラボした関連グッズを販売したり、女性向けの恋愛ゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪』のグッズ販売イベントを主要店舗で行ったりしています。さらに、TVアニメ『アホガール』、『徒然チルドレン』の製作にもかかわるなど、アニメとの関係をより深めているのです。

こうした攻勢によってアニメ事業部は4年の間に急成長し、2019年3月期の取扱高は75億円となり、キャラクターカードの新規会員数は11万7000人(エポスカード全体は84万人で全体の14%)に増えています。

毎年、二桁の伸長率を誇るエポスカード

丸井は戦前、家具の割賦販売業として創業しました。戦後は月賦販売の百貨店として首都圏を中心に店舗を拡大し、1960年にはいち早くクレジットカードの発行を始めています。そして今年、2020年はクレジットカード発行60周年にあたり記念すべき年といえます。

このことからもわかるように、丸井の本質は、百貨店というより、金融業であるといっていいでしょう。ありていにいってしまえば金貸しです。
そして、金融業という視点で見ると、丸井にとって取り扱う商品=売るモノは(若者に受けるものなら)なんでもいいといえました。60年代から70年代の初めにかけての高度成長期は、地方から上京してきた若者をターゲットに、家具や家電、その後、アパレル=ファッションをメイン商品に据えた割賦(クレジットカード)販売を行ってきました。そして、現在は、アニメ・ゲームの関連グッズや関連情報の販売に重きを置いているのです。

このようにマルイは、常に若者の嗜好を先取りするカタチで、商品を販売して、その購入にエポスカードを使ってもらおうとしています。その結果、ターゲットがしっかり合っているので、今はエポスカードの取扱高が順調に伸びているのです。
2019年3月期のエポスカードの総取扱高が2兆3000億円で初めて2兆円を突破。前年に比べて17%(年平均伸長率)の伸びで、主要カード会社の9%を大きく上回っています。
2010年から2019年までの10年間の平均でも、エポスカードが毎年19%増えているのに対し、主要カード会社は7%増にとどまっています。
他のクレジットカード会社が一桁の伸びであるのに丸井が二桁伸長を続けているのは注目に値します。

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“コト消費”でユーザーの囲い込みに成功

近年、「モノ消費からコト消費へ」がマーケティングのキーワードになっています。丸井のアニメ事業部は、これを巧みに具現化しているといえます。

キャラクターカードを発行しているクレジットカード会社は丸井グループだけではありません。オリコや三井住友カードはずっと以前からキャラクターカードを出していました。しかし、丸井のようなアニメファン(オタク)が集まる実店舗(拠点)をもっていませんでした。そこが大きな違いです。

キャラクターカードは一つの大きな武器ですが、どんなにメジャーなアニメでもただキャラクターカードを出すだけでは、顧客の獲得・囲い込みには限界があります。リアルにいろいろな体験ができたり、欲しいグッズがすぐ手に入る「場」が必要になるのです。

アニメやゲームなどの関連商品を販売するアニメイトアネックス(池袋)は、知る人ぞ知る女性アニメファンのメッカです。オタクの聖地といえば、秋葉原と決まっていましたが、5年ほど前から池袋に変わってきました。それはアニメイトの巨大百貨店が池袋の駅近くにできたからです。
女の子専門といってよいグッズが9階建ての建物全館に溢れていて、毎日女の子たちでいっぱいです。そこでは商品販売もですが、イベントが開かれてマニアを集めています。それと同じようなものを、丸井は全国で作ろうとしていると筆者は思っています。

現在は新宿マルイアネックスの巨大ビルの広いフロアに、フィギュアなどの関連商品を集めて販売を行っています。新宿以外の全国13ヵ所の店舗でもアニメ関連のグッズ販売を行っていますが、このネットワークをさらに大きく広げてくるのではないでしょうか。

コンテンツとリアルをうまくかみ合わせている

丸井のキャラクターカードの会員は、クリアファイルや缶バッジがプレゼントされるなどの特典がありますが、それと共に各地の店舗で行われるイベントに招待されたりするので、カード会員として定着する率も高くなると思われます。人気の声優を呼んできて、一曲歌ってもらうだけでもファンは殺到するでしょうから。

ところがたとえば三井住友カードなどはそうしたリアルな場がほとんどありません。ウェブサイトでのやりとりだけなので、丸井に比べるとファンへの訴求度という点でかなり見劣りするのではないでしょうか。せいぜい入会特典や会報か、ときおり行われるミーティングでつなぎとめるしかありません。
丸井は、アニメ(リアル体験をともなう)を介在させることで、カード事業(フィンテック)と顧客の親和性を高めているといえるのです。

先に、丸井が「銀魂エポスカード」を発行していると書きましたが、私は少し前に丸井の担当者と「銀魂と組めるといいですね」と話したばかりでしたが、銀魂とまさか本当にコラボできるとは思っていませんでした。
何といっても『少年ジャンプ』という大看板の人気キャラですから、後発のエポスでは無理だろうと思っていました。ところが、銀魂はエポスの意気込みと総合力に惚れたのか、提携を認めてくれました。

人気アニメは当然、複数のカード会社による争奪戦になります。版権の取り扱いも難しいのですが、丸井は2017年にゲームメーカーのオトメイトやカプコンと提携することで、Win-Winの関係を築いていることもあって他社に比べて優位に交渉を進めることができたのでしょう。その辺の根回しも上手です。

丸井のDNAは金融業

高度成長期に頂点を迎え、バブル崩壊以降、輝きを失った百貨店業界にあって、セブン&アイ・ホールディングスの傘下に入った西武などとは違って、丸井グループは主要な店舗をなんとか維持してきました。つまり、身売りすることなく、品揃えを変えて生き延びた、ある意味の業態転換をうまくやりとげたといえます。

繰り返しになりますが、金融業がDNAであるため、店舗はあくまで器であって、何を売るかは重要ではなかったことが丸井にとって幸いしたといえるのです。
金融業の対象となる20代の若者がいちばん関心のあるものを店頭に並べる、その基本を徹底したことが生き残りに繋がったということです。
最初は家具、高度成長で少し豊かになるとアパレル(ファッション)に変わり、90年代から2000年代に入ると多くのクレジットカード会員がアニメやゲームに関心があることがわかりました。
ちょうどそのころがモノ消費からコト消費への転換のときでもあったので、うまく追い風に乗ってアニメとクレジットカードを組み合わせることで大きく伸びていきました。これがエポスカードが好調な理由です。丸井の経営陣はこうした自社の強みをよく知っているはずです。

伊勢丹がいまもマルイを徹底マークする理由

新宿マルイアネックスの目の前には新宿伊勢丹があります。筆者が伊勢丹に取材に行くと、以前は、担当者はこんなふうにいっていました。「マルイさんが次に何をやるか、心配です」と。

何をそんなに恐れているのか不思議でした。巨像が小さいアリを恐れるようで滑稽でもあったのですが、今になってその理由がわかったような気がします。
丸井は常に変化し続けています。その変わり身がいまのところうまくいっています。この先どうなるかはわかりませんが、変わり続けることが自社のレゾンデトールだとわかっているとすれば、待ち受ける困難をスルリとかわしていくことも可能でしょう。それがクレジットカード発行の60年間で培った知恵だったといえるのかもしれません。

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