ヤフー・LINE統合の勘違い。PayPayとLINE Payは「共存」させて楽天Payを潰しにいく/岩田昭男
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ヤフー・LINEの経営統合が決まり、キャッシュレス戦争は激しさを増しています。私は運営会社が1つになれど、PayPayとLINE Payは別々に存続すると見ています。
70歳のおじいさんもキャッシュレス
10月1日にポイント還元事業が始まって早2ヶ月が経ちました。最初は手続きが複雑すぎるため利用する人も少ないと言われていましたが、蓋を開けてみるとコンビニや中小店舗で電子マネーやQRコードを使う人が増えてきています。
近くのコンビニでも「昼休み」にできるレジの前の行列が「午後」にも、「夕方」にもできるようになりました。
大手コンビニなら必ず2%即割になり、しかもそれがレシートにきちんと記載されるので、「お得」を実感できるからお客が集まるのです。
郊外のスーパーでは、70歳過ぎのおじいさんが、電子マネーを使って買い物をしています。スーパーで電子マネーを使うのは女性という印象でしたが、最近は男性も増えているのです。
楽天によれば、楽天ペイのアプリをダウンロードした人が、9月1日に比べて10月1日には10倍に増えたというので驚きです。
いよいよキャッシュレスが本格的な普及に入ったといえるでしょう。
突然、LINE PayとPayPayが「同じグループ」に
なかでも注目は、QRコード決済。「PayPay」「LINE Pay」「楽天ペイ」の3強が生き残りをかけてしのぎを削っています。
ところが、そんな時に飛び込んできたのが、11月18日のLINEとヤフーが経営統合を検討中というビックニュースでした。
これが実現すれば、LINE PayとPayPayが同じグループに属するようになるので、マスコミは大騒ぎをしました(正式には公正取引委員会の審査を経て、2020年秋に統合となります。巨大事業者同士の統合はかなり厳しいという意見もあります)。
ただ、実際に利用する側にすると、LINE PayとPayPayの2つが今後どうなるのか。非常に気になるところです。
2つとも今まで通りに使えるのか、それとも1つだけ残って、もう1つが落ちるのかといったことが心配になります。
経営統合でもサービスは別々に存続する?
親会社のヤフーとしては、QRコード決済を2つも持ちたくはない、何とかして1つに統合しようと努力するはずです。いずれは「LINE PayPay」といった名前で1つにまとめて、よいとこどりをしようとするものです。
しかし、どうやら今回の統合に関しては、1つになることはなさそうです。
というのも、LINE PayとPayPayの性格があまりに違いすぎるからです。
LINE PayとPayPayを無理やりひとつにする必要はない
LINE Payは通信アプリ型のQRコード決済で、友達の輪を広げたり、チャットで話したりするメディアです。その中で、友達同士(主婦やOL)でお金のやりとりをする時に活躍するのがLINE Payなのです。一方のPayPayは、基本は決済アプリで、最初から買い物をする時のサポートをするのが役割となっています(クレジットカードと同じ)。
同じQRコード決済といってもまったく異なるもので、両者は互いに補完はするけれども、重なり合うことはありません。ヤフーとしても相乗効果を得やすい良い組み合わせとなっています。
だから、無理やりひとつにする必要はないのです。
孫正義氏の思惑とは?
ヤフーの中心ユーザーは、スマホではなくパソコンを利用する中高年です。そこにLINEの若いユーザー、女性がどっと入ってくるわけです。孫社長にとって、もしかしたらそれがいちばん大きな魅力だったのではないでしょうか。
もう1つ、これはPayPayにとってのメリットと言っていいのですが、PayPayはいまポイント還元競争から足を洗いたがっていて、不毛な消耗戦を終結させるいい機会だったのです。
すべてを飲み込む「スーパーアプリ構想」
そして新たに打ち出したのが「スーパーアプリ構想」です。最後の出口は決済アプリのPayPayですが、ホテルの予約アプリやタクシー配車アプリなどをスマホに取り込んでサービスを提供するというものです。
すでにインドやインドネシアなどのアジアの国々では盛んになっているのですが、ヤフーもこれに取り込もとしていた矢先でした。
LINEはすでにこうしたアプリをたくさん取り込んでいます。たとえばレストランの予約キャンセルアプリというのがあります。お目当てのレストランの予約キャンセルが出たらすぐに教えてくれるアプリで若い女性に人気です。
今後はPayPayとLINEがそうしたアプリを共有してユーザーに提供できるように、「暮らしに必要なものをすべて提供する」というスーパーアプリ構想の実現と、ネット(スマホ)を通してあらゆるサービスを提供するプラットフォーマーに一歩近づくことができるようになったといえます。
そうした意味では、この統合が双方にWIN-WIN(ウィンウィン)の効果をもたらすものといっていいでしょう。
「ヤフー・LINE連合」vs.「楽天・Suica連合」へ
今後はヤフー+LINE連合がしっかりとトップの座を固めて、ライバルとなる楽天+Suica連合を叩くという構図になります。楽天ペイメントとJR東日本が提携し、来年の6月から楽天ペイのアプリで交通系電子マネーのSuicaの発行とチャージが可能になります。Eコマースの流通総額日本一(3兆4,000億円)の楽天と発行枚数が7,600万枚を超えるSuicaの連合軍は強力です。
この楽天+Suica連合が、ヤフー+LINE連合をどう迎え撃つのか。いまから楽しみです。
まさに天下分け目の関ケ原の戦いです。
日本政府は「マイナンバー利用」で中国を参考にしている?
中国では、アリババ(アリペイ)とテンセント(ウィーチャット)の2社が性格を若干異にしながらうまく共存し、刺激し合っています。それぞれの役割が微妙に違っていて、カニバル(共食い)がないのです。
中国の政府はテンセントに肩入れしていて、ウィーチャットに保険証や免許証を入れられるようにしています。そのためウィーチャットの利用が最近増えてきています。
実はこれに飛びついたのが日本政府です。どういうことかというと、日本政府が来年9月から実行しようと予定しているマイナンバカードによるポイント還元制度は、この中国のテンセントのケースを参考にしているのです。
PayPayとLINE Payは共存へ
いずれにしても、アリババに出資しているソフトバンクすなわち孫社長は、こうした中国の事情をよくわかっています。ですから、それぞれの良さを生かしながら、PayPayとLINE Payをうまく共存させていくことを考えているはずです。
中国のアリペイとウィーチャットペイがうまく共存しているように、PayPayとLINE Payを共存させながら双方を大きくしてくことを考えているかもしれません。
孫正義氏「投資失敗」の余波がここにも?
ただ、1つの懸念材料は、ソフトバンクグループの巨額投資の失敗です。ソフトバングループというより、孫社長の失敗と言ってもいいのですが、1兆円を超える投資を行っていたアメリカのシェアハウス運営会社・ウィーカンパニーの企業価値が急落し、2019年上半期の9月中間決算で過去最悪の7,000憶円の赤字に転落しています。
孫社長は、ウィーカンパニーに対してさらに9000億円もの追加融資を行い、同社の立て直し図る考えですが、こうしたスタートアップやユニコーン(企業価値が10億ドル以上の非上場企業)に対する積極的な投資が、ソフトバンクグループ傘下の企業のアキレス腱になる危険があります。
これが不安要因といえるでしょう。
岩田 昭男
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