決済はコミュニケーションだ!/岩田昭男
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スマートフォンやタブレット端末でクレジット決済できるサービスが広がっている。いくつか種類があるが、なかでも「Square(スクエア)」がひっぱりだこだ。日本には2013年5月に上陸したばかりだが、すでに昨年、三井住友カードから1,000万ドル(約10億円)の出資を受けている。2009年に創業のSquareは、米国での経験もまだ4年ほどしかない。そんなベンチャー企業に出資したと聞いて「大丈夫なのかな」とも感じた。
しかし、米国での評価は全然ちがう。創業者のジャック・ドーシーはツイッターの共同創業者で、まさにカリスマ経営者だ。その人が手がける決済ビジネスだから、「未来を先取りした素晴らしいものに違いない」と皆が期待し、出資を希望する。実際、競争が激しすぎて、出資をしたくても思うようにはいかないのだ。では、Squareのどこが画期的なのか。どこが他と違っているのか。その理由を私なりに考えてみた。
第一は、楽天スマートペイなどと違って、Squareはカードリーダを配って終わりではないことだ。対象とする事業主には、専用アプリ(POSアプリ)をダウンロードさせ、そこに蓄えられたデータを元に事業展開に役立つコンサルを行っている。Squareの狙いは、会員を増やすだけでなく、その人たちと業務コンサルタントとして長く付き合い、互いに成長していくこと。ここが人気を集める理由だ。POSアプリを使うと、クレジットカードだけでなく、現金も含めて毎日の売上高を記録することができるので、売上げ状況を完全に把握できる。
こうした機能は通常、別途ソフトウエアを購入して対応しなければならない。Squareの場合は、3.25%の手数料の中にその料金も含まれているので、全体からみると割安になる。
また、Square独自の「顔認証パス」も見逃せない。米国のスターバックスでは一部でスタートしているが、あらかじめ「Square Wallet」に自分の顔を登録して、買いたい商品を選んでおけば、店に行くだけでその商品を店員がもってきてくれる。しかも、ニコニコと挨拶をしながら。これなどは「決済はコミュニケーションである」というドーシーの主張を実現したサービスそのものだ。
彼の作ったツイッターは、それまでの主流であるメールと異なる性格を持ったコミュニケーションツールだった。メールの特徴が“建前のコミュニケーション”であり、“文書の正確性”にあったのに対し、ツイッターは“本音の羅列”で、取り止めのない日常を記せる。両者は「表」と「裏」の関係だ。それと同じ関係をドーシーは、決済にも持ち込もうとしているのだ。
これまでのクレジット決済は、どちらかというと高額利用が中心だった。これに対してSquareは、これまで加盟店になれなかったスモールビジネスを対象に、手軽に売り買いできるということを目指している。決済のツイッター化と言ってもよいだろう。そして、この分野は従来のカード会社が最も不得手とするところであった。三井住友カードは、カード決済が浸透していない約190万の中小企業の攻略をSquareの手を借りて成し遂げようとしている。また、クレジット業界の盟主Visaも同じ考えでSquareを強力に後押ししている。
それを受けてドーシーは、ツイッターの手法で決済業界の質的転換を図ろうとしているのである。重要なことは、この分野に追い風が吹いていることだ。最小の単位のコミュニケーションのツイッターが社会のメインになりうることをドーシーは完全に実感している。だから、Squareも伸びるという自信をもっている。これは強い。
岩田昭男
『CardWave』 2013年7・8月号 掲載記事
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