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2020年11月24日 岩田昭男が探る

フィンテックの先駆者PayPalがコロナ禍で躍進できた理由/岩田 昭男

シリコンバレー生まれ、伝説の決済サービス

PayPal(ペイパル)のことはご存知だろうか。20年以上前に米国のシリコンバレーで生まれたオンライン決済サービスの先駆けで、決済、送金、集金など多くのサービスをカバーする。その強力な個性を武器にして業界を牽引してきた。日本ではそれほど知られていないが世界ではフィンテックの覇者として高く評価されており、事業規模も大きい。


現在PayPalは世界200以上の国と地域、3億5千万人以上のユーザーを擁している。そして、同社がモットーとするところは、「フィンテックのテクノロジーを活用することで、金融サービスと商取引をより便利で手頃な価格で利用できるようにする」こと。つまり、テクノロジーで「金融の民主化」を起こそうとしているのだ。この思いは一貫して変わらない。


┃ペイパルとは?

ペイパルは決済手段の一つで、支払先にカード情報を知られることなく決済ができるサービス。個人の大切なカード情報はペイパルのみが厳重に管理する。日本円での支払いは手数料0円。現地通貨に変更する際は通貨換算手数料(為替手数料)がかかる。



ちなみに同社の2020年第二四半期(4月期〜6月期)の純利益は15億3000万ドル(約1600億円)であったが、その金額は、金融大手の米シティグループの純利益を上回り、さらに日本トップの三菱UFJフィナンシャルグループに迫る所に来ている。世界の大手金融グループと互角に戦える力を十分持っているということである。

eBayのくびきを解いて独立へ

そのPayPalは、しかし、紆余曲折の多い会社だった。創業は1998年だったが、2002年には大手通販サイトeBayに買収されてその決済ビジネスを担うようになった。しかしその絶妙の立ち位置から2015年にはeBayから独立してPayPalブランドとして本格的な活動を始めるのである。ちなみに絶妙の立ち位置というのはクレジットカードからウェブ決済まで、広範囲にセキュアにカバーする力をこの会社(のスタッフたち)が持っていたこと。それがあったから生き残れたのだ。

PayPalが日本に出てきたのは2010年、eBay傘下でオフィスを構えて決済ビジネスを行い、2015年からはeBayから独立した形でPayPalのビジネスを行なっている。

当時日本ではQRコード決済が出始めたところで、キャッシュレス分野への新規参入が相次いでいた。その混戦の中に飛び込んだために苦戦を余儀なくされると見られたが、2020年に入って風向きが変わった。新型コロナウィルス感染拡大が始まったからである。

というのはコロナの感染拡大で、人々は店舗での飲食を敬遠するようになり、持ち帰りや出前を求めるようになった。それだけでなく、「外出自粛」が当たり前になった影響で自宅にいて(おウチ時間で)いろいろなものを買い物するようになったのである。その結果、人々の関心はネット通販に集まり、多くの人がネット経由で欲しいものを買うようになった。

航空系カードも打撃

コロナ感染拡大は、様々な業界に影響を与えている。飲食店はその代表例であるが、その他にもダメージを受けたところがある。中でも深刻だったのはパンデミックで、世界の国境を越えた移動が厳しく制限されるようになった航空業界である。JALやANAの国際線はほとんど飛ばなくなったために地上職員が大規模なリストラに追い込まれている。

当然、航空系のクレジットカードも影響を受けている。各社が発行するマイレージプログラムのマイルも、特典航空券に換えてリゾートで遊べなくなったために価値が大幅に下落しているという。

ネット通販やネット関連は増収増益

その一方で、同じ決済事業者の中でも、コロナ禍の中で業績を伸ばした業者もあった。楽天カードやアマゾンカード、Yahoo! JAPANカードなど自前で通販サイトを運営しているクレジットカード会社が伸びたほか、PayPalも巣篭もり消費や新しい生活様式(ニューノーマル)の影響で伸びた。

PayPalが11月2日に発表した2020年7月〜9月第3四半期決算によると、取扱高は2470億ドルと、前年同期比で38%も増加した。さらに売上高も54億6000万ドルと前年同月比25 %増で予想を上回った。また、新規アカウント数も1520万件で前年同期比55 %増と急速に増えている。


コロナが世界規模で広がったことで、世界をネットワークするPayPalの売り上げも目覚ましいものになった。オンライン消費が拡大して収益が押し上げられ最高益を出すまでになっているのだ(世界的ネットワークを持つ航空会社がパンデミックでダメージを受けたのとは対照的である)。

しかし、PayPalはどうしてここまで伸びるのか。楽天やアマゾンが自社の通販サイトで、自社のクレジットカードを使わせて伸びるというのはよくわかるが、自社物販サイトを持たないPayPalが急拡大に伸びた理由は何であろうか。

PayPalの強さはセキュリティ

2つの理由があると考えられる。PayPalはすでに20年以上の歴史があり、世界ではとくに中高年に支持されて人気がある。かつて個人輸入で海外から嗜好品を購入する時にPayPalという便利なものがあると聞いたことがあるという人もいるだろう。その良い印象を今も持って支持しているからだ(筆者もその一人である)。

それとともに彼らはトラブルを嫌うシルバーテック(50代)世代でありセキュリティ意識が強い。ネットショッピングでも安易にカード番号を打とうとしないところがある。そういう彼らにとってはアカウントだけでカード番号を入力する必要がないPayPalは安全なツールに見えるのである。だから多くの人が使い、トランザクション(決済回数)が増えるのだ。

もう一つはPayPalは米国発祥であるが、その加盟店は英語圏の国々が中心となっている。米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インドなどかつての大英帝国の植民地を中心に加盟店ネットワークが広がっており、英語圏=PayPal圏という図式になっているのだ。そのためこうした国々との「越境取引」をするには非常に便利なのである。さらにPayPalは「共通通貨」としての側面が強く、楽天やアマゾンのような自前のネット通販サイトには縛られない自由がある。この利点があって有利に働いていることも見逃せない。

PayPalの売れ筋ベスト5

では、次にPayPalを使って購入されている商品には何があるのか、ニューノーマルの時代で人気になっている商品は何かを見てみよう。

筆者が持っているデータはコロナの影響がなかった1月のデータと、緊急事態宣言が出た4月の日本における売上を比較したものである。

■ニューノーマル時代のベスト5

緊急事態宣言が出た以降に売上が急上昇したカテゴリーの順位を見てみよう。こちらは第1位サプリメント、2位楽器類、3位書籍、4位家具、5位食料品&飲料、6位園芸となっている。1位のサプリメントというのはやはりコロナ禍で何とか免疫力を高めようというので皆がビタミン剤などに走ったのだろう。感染を避けるのに必死という姿が目に浮かぶようだ。2位、3位、6位はそれぞれ自宅で楽しむための巣ごもり需要から発しているが、いずれもコロナへの強い警戒心が伺える。


一方で1月と4月の取扱高を比べて全体的に売上規模の大きかったカテゴリーを出した調査では、第1位ファッション、2位ゲーム、3位教育、4位化粧品、5位サブスクリプション(動画配信)という順位になった。こちらにもゲーム(2位)やサブスクリプション(5位)など巣ごもり的なアイテムが登場してくる。ステイ・ホームの時世をよく表している。

3000円割引エイチ・アイ・エスとのコラボ

そして、PayPalは世界的な好業績を背景に日本市場の攻略にも本腰を入れ始めた。大手旅行会社やゲーム会社とのコラボ事業や新しいキャンペーンをいくつか打ち出して積極的なマーケティングを開始している。

今年になって楽天市場がPayPalの利用をスタートしたのに続いて10月からは大手旅行会社HIS (エイチ・アイ・エス)の国内パッケージツアーや国内航空券・ホテル等のオンライン購入での決済手段としてPayPalが利用できるようになっている。それを記念して2021年3月末まで「GoToトラベル」と併用可能な3000円OFFクーポンキャンペーンを開催中だ。

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その他にもゲーム会社とのコラボが走っている。ゲーム関連では 対象加盟店で一定金額をPayPalで決済すると割引クーポンがもらえるキャンペーンを実施中だ。割引クーポンの配布対象となる加盟店は、1週ごとに切り替わり、8週連続で展開するというのもユニーク。

>>ゲームキャンペーン…【期間限定】PayPal支払いでお得なクーポンがもらえる!

ふるさと納税で地方への広がりを期待

また、ふるさと納税の取り扱いも可能になった。ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」では、新たな決済手段としてPayPalの提供を2019年10月から行っている。「ふるさとチョイス」の寄付者は、PayPalを利用することで「ふるさとチョイス」で支援・応援したい自治体に寄付をする際、クレジットカード情報を入力せずにPayPalアカウントからワンタッチで決済ができるようになっている。

PayPalは堅牢なセキュリティシステムに加えて独自の不正防止対策を行っているため決済を安全でストレスなくできるところが評価されている。

PayPalとするとふるさと納税にコミットすることで、都市部だけでなく、キャッシュレス化が進む全国地域への展開を加速する狙いがある。PayPalは日本を重要なマーケットと位置づけ、より日本に根ざした企業活動を行おうとしている。

キャッシュレス時代になって浸透するPayPal

このほか米国では仮想通貨ビットコインの購入がPayPalでできるようになった。次世代の通貨といわれたものの芽のでないビットコイン、その復活の新しい道筋が見えたと話題になっている。この動きは日本へも影響するかもしれない。

さらにキャシュレス・ポイント還元事業以降、日本のキャシュレス化は急速に進みつつあり、人々のリテラシーも高くなってきている。こうした社会的変化があるので、PayPalが今度こそ日本に根付く可能性も出てきている。大いに注目したいものである。

 

 

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