「キャッシュレス覇権戦争」 岩田昭男(著)~岩田がみたキャッシュレス最新事情
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2019年2月12日に上梓した「キャッシュレス覇権戦争」(NHK出版新書)では、キャッシュレス決済が日本にどのように普及し社会を変えていくのか、どういった問題を引き起こすのかについて執筆しました。
今回は、中でもとりわけ関心の高い「キャッシュレスの最新事情」についてお話しします。
クレジットカードは主役から裏方に?
キャッシュレス決済には、クレジットカード、電子マネー、デビットカードそしてQRコード決済があります。今後どのツールがキャッシュレスの主役になるのでしょうか?私は「QRコード決済」とみています。というのも、PayPayの20%ポイント還元やOrigami Payのケンタッキー半額など、大型キャンペーンで利用者を上手く引き付けているからです。実際、PayPayが昨年行った大型キャンペーンでは、アプリのダウンロード数190万という数字を叩き出しています。
これに加え、QRコード決済と特定のクレジットカードを紐付けるとさらなる特典もあります。このようにキャンペーンやクレジットカードを上手く利用して、ポイントや割引をかき集めたいという人はこれからも増えていくでしょう。
■クレジットカードと利用特典
決済サービス名 | クレジットカード | カード利用特典 |
PayPay | Yahoo! JAPANカード | 「Yahoo! JAPANカード」でチャージをすれば、チャージ金額に応じて1.0%のTポイントが付与される。 |
楽天ペイ | 楽天カード | 「楽天カード」を紐付けると、利用金額に応じて1.0%の楽天スーパーポイントが加算される。 |
LINE Pay | LINE Pay Visaクレジットカード(予定) | 初年度、3%のLINEポイントが付与される(予定) |
Origami Pay | セゾンカード | 「セゾンOrigami Pay」でスマホ決済ができ、利用金額に応じて0.5%の永久不滅ポイントが付与される。 |
d払い | dカード | 「dカード」を紐付けると、利用金額に応じて1.0%のdポイントが加算される。 |
これからは、支払い時に利用するツールはスマホにで裏側で決済を行うのはクレジットカードという構図になっていくのではないでしょうか。
QRコード決済キャンペーンの効果は?
賛否両論のQRコード決済キャンペーンについて、少し私なりの感想を述べたいと思います。派手なキャンペーンで思い出すのは、PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」です。ご存知の方も多いと思いますが、これは2018年の12月に行われたキャンペーンで購入金額の20%分が電子マネー(PayPayボーナス)として還元されました。しかし、原資となる100億円をすぐに使い切ってしまって、キャンペーンはわずか10日で終了。ふたを開ければ、利用者のお目当てはアップル製品や大型家電製品で、個人商店には浸透せず、家電量販店だけが儲けたのではないかとの批判があがりました。ですが、100億円というインパクトで利用者の射幸心を煽ったことに加え、連日メディアでも取り上げられました。中身はともあれ、私は世にQRコード決済を知らしめたという点で効果があったと感じています。
PayPayはその後「第2弾100億円キャンペーン」を行っています。第2弾は付与されるポイントに上限を設け、少額支払いでポイントがたまりやすくなるよう中身を改変。個人商店で使ってもらいやすいよう工夫を凝らしましたが、前回に比べいささかトーンダウンしたことは否めません。おそらく第一弾でおいしいところだけ摘み取った人たちは、今回のキャンペーンには関心を示さないでしょう。ですが、個人商店でのキャッシュレス化を考えれば、これこそが本来の姿です。こういった施策は、QRコード決済の普及を後押ししてくれると思います。
キャッシュレス対応店は広がるか?
このように、あの手この手で事業者はキャッシュレス化を浸透させようとしています。ですが、一体加盟店は拡大しているのでしょうか。そこで、私が事務所を設け、20年間ウォッチしている高田馬場駅周辺をレポートしたいと思います。高田馬場は山手線の新宿と池袋の間に位置する東京の典型的な繁華街です。駅周辺には大きな商店街があり、大手全国チェーン、中堅チェーン、個人商店が多く集まり、定点観測するのに最適な立地です。大手全国チェーンは数年前からキャッシュレスに対応していましたが、中堅チェーンや個人商店は対応していませんでした。変化が起こったのは昨年2018年の3月から。特に現金しか使えなかった中堅チェーン店で軒並み電子マネーが使えるようになったのです。
■大手全国チェーン店:「ファミリーマート」
クレジットカードはすでに利用可能でしたが、今から6年前(2013年)に電子マネーの対応が始まりました。利用できるのは交通系電子マネー、楽天Edy、WAION、iD、QUICPayです。電子マネーの端末はこのように単体で置かれているので、FeliCaマークにカードをタッチすれば支払いは完了します。このほかLINE Pay、PayPay、楽天ペイ、d払いといったQRコード決済にも対応しています。
■中堅チェーン店:「大戸屋ごはん処」
クレジットカードはすでに扱っていましたが、昨年2月(2018年)から電子マネーに対応しています。Suica、パスモなどの交通系電子マネーが使えるようになりました。楽天Edyも使えます。QRコード決済には対応していません。
■中堅チェーン店:ファッションセンターしまむら
埼玉を本社におく衣料スーパーで首都圏を中心に展開している中堅チェーンです。クレジットカードはすでに扱っていましたが、昨年9月から電子マネーへの対応を開始しました。電子マネーは交通系をはじめ、iD、QUICPay、WAON、nanacoなどFeliCaを一通り扱っています。
お客さんは女性が多く、利用する電子マネーはWAONとnanacoが半分ずつ。男性客はSuicaを利用する人が多いようです。QRコード決済は導入されていません。
■中堅チェーン店:喫茶室ルノアール
20年間一貫して現金しか扱っていませんでしたが、途中で楽天Edyが使えるようになり、昨年からほとんどの電子マネーが使えるようになりました。以前は現金払いの人が多かったのですが、最近は電子マネーで支払う人が増えてきました。左の端末は楽天Edy用、右側にある端末は交通系電子マネーはじめ、iD、QUICPay、WAON、nanacoに対応しており、QRコードやバーコードにも対応できるハイスペックなものです。ただし、現時点ではQRコード決済には対応していません。
■個人商店:こだわり商店(早稲田)
「こだわり商店」は早稲田にある八百屋さん。昨年9月からAmazonペイを導入し、QRコード決済ができるようになりました。PayPayやアリペイにも対応しています。商店街でスマホでポイントラリーをするなどイベントが盛んに行われています。
高田馬場の状況をまとめてみると、クレジットカード、電子マネーに関しては、大手全国チェーンはすでに導入済み、中堅チェーンも昨年2018年にほぼ導入を終えています。未だ進まないのが個人商店です。全国チェーン→中堅チェーンといった流れで、最終的に個人商店に行きつくと思いましたが、実際はそうでなさそうです。3%~6%といわれる手数料を払ってまで、導入したくないのが本音でしょう。
ですが、初期費用・手数料が安いQRコード決済については、上記のこだわり商店はじめ、ラーメン店や理髪店など個人商店に普及しはじめています。今後、キャッシュレス化を進めるうえでQRコード決済は重要な役割を担っていくものと思われます。
書籍の紹介
「キャッシュレス覇権戦争」 岩田昭男/著
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