サンフランシスコ探訪(3)/岩田昭男 ~日本発、新サービスの切り口を考える~
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サンフランシスコのダウンタウンからほど近いところにSquareの本社はある。取材を通して話を聞けば聞くほど刺激を受けることは多い。前回のサンフランシスコ探訪(2)でもサンフランシスコ発のビジネスを紹介したが、つくづくアメリカ人は合理的なことを編み出す名人だと感じさせられる。とはいえ、アメリカと日本ではやはり“お国事情”は異なる。日本には日本なりの着眼点を持ったサービスが創出されてもいいのではないだろうか、とも感じる。
●やっかいな支払いを“隠そう”とするアメリカ人●
SquareのCEOジャック・ドーシーは、こう主張している。「Make commerce easy」(商売を簡単にする)。つまり売り手と買い手の取引きを簡単にするということ。「取引きをシンプルに」とも言い換えられるだろう。ご存じの通り、アメリカにはチップというやっかいなものがある。タクシー、レストランなどでサービスを受けると料金の15%前後のチップを払わなければならないため、チップの計算、小銭の用意とやたら面倒で手間がかかる。だから、取引きを“easy”や“simple”にしたいのだ。その言葉の中には、チップもまとめて処理したいという意図も込められている。
取引きをシンプルにするため、Squareは小さな事業主でも簡単にクレジットカードを活用できるようにしたし、名前を言うだけで決済が完結するSquare Walletも開発した。前回紹介したウーバーも、スマホ一台でタクシーの配車からチップを含めた決済までが完了するサービスを提供している。クレジットカードを出す手間もいらない。やっかいな支払いを隠せば快適さが得られることを示している。
●日本に必要なのは“支払いコンシュルジュ”!?
とはいえ、これらのビジネスの根底にある発想はアメリカ事情から生まれたものと言える。日本には日本独自の視点があってもいいと思う。
まず支払いについて、日本にはチップの習慣がないために、アメリカほど面倒でもなく、切羽詰まってもいない。それどころか、すでにSuica(スイカ)や楽天Edy(エディ)などの電子マネーが「タッチしてゴー」「タッチしてチャリン」というeasyさを実現しているので、日本発の何か考える場合にはもう少し着眼点を広げていく必要がある。
キャッシュに焦点を当てて徹底的にそこを攻めるというのでもよいが、私はレジ回りで様々なサービスを提供する方向に行くのが正解だと思っている。例えば、レジのそばにコンシュルジュが一人立っていて、「リボ払いがいいですよ」「こっちの商品の方がお得です」「このカードを使うと安くなりますよ」などとガイドするのだ。レジにコンシュルジュがいる光景は画期的とも言える。
●余談ながら……、実は岩田が体験済み●
そういうのも、これは10年以上も前にキー局の奥様番組で経験したことが元になっている。それは、スーパーに出向いて主婦にカードの使い方を指南するという番組。そのときにレジの横に立って、精算する主婦にいちいちアドバイスしたものだ。最初は恥ずかしかったが、感謝の言葉をもらうようになり、最後は楽しくなってきた。ディレクターから、「岩田さん、そのコンシェルジュはビジネスになりますよ」と言われ、思わず本気でやろうと考えたりしたものだ。
しかし、当時は、主婦にアドバイスするにもとにかくレジに立たなければならないので、これは大変なことだった。今ならスマホのアプリでこれは実現ができる。第一、顧客のパーソナルデータを使って解析すれば、その人にあったより精度の高いアドバイスは可能であろう。レジがその都度アドバイスを発するようにしてもよい。
ともかく、アメリカでは支払いを隠すのに一生懸命だが、日本ではむしろ、ガイドやコンシェルジュ機能を付加したサービスに発展していくのがよいのではないだろうか。これなら数多くある選択肢からベストチョイスを得られるため利用者メリットは大きいし、何よりも日本人の志向に合っている気がする。
アメリカ的発想に刺激を受けた今回の取材旅行では、日本発の新しいビジネスについて、もいろいろと考えさせられた。さて、サンフランシスコでの雑感はこのぐらいにして、次回はいよいよSquare本社での取材についてお伝えしたい。
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