サンフランシスコ探訪(2)/岩田昭男 ~スマホ決済の“イノベーターたち”~
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ケーブルカーに揺られながらサンフランシスコの街を見物していると、人種の多様化を感じずにはいられない。30年後には“マイノリティー”が“マジョリティー”になると予測される移民大国アメリカ……。さまざまなバックグランドを持った人が生きていくために、“かんたん”で“わかりやすい”ことは、この国で欠かせない。ここサンフランシスコでも、不便を取り除き、快適に生きるためのビジネスが数々生まれている。
今回の滞在でとても興味を引き付けられたのは、Uber(ウーバー)とSquare Wallet(Squareウォレット)だ。双方とも、支払いをシンプルに、スムーズに行うためのサービスを提供している。一般的に支払い時に発生するお金のやりとりは時間がかかるし、面倒である。カバンからサイフを見つけ出し、クレジットカードや現金を取り出して、おつりとレシートを受け取って、またしまう…。とくに欧米ではチップを求められることがあり、10%、15%、20%のいくらをプラスするかで悩むことも多い。こんなことに時間を費やすなんて全く煩わしい限りである。
「不便があれば、それを取り除こう!」。この精神の通りに、支払いを隠したり、なくしてくれるのがウーバーでありSquareウォレットだ。そしてそのデバイスとして“スマートフォン”(スマホ)が選ばれた。
●Uber(ウーバー)●
ウーバーは、タクシードライバーと乗客をマッチングさせるアプリを提供しているスタートアップ企業だ。利用者が希望する場所にタクシーを配車し、決済も自動的に行ってくれる。スマホ一台で手続きがすべて完結する。ウーバーは2009年にサンフランシスコでサービスを開始し、現在はアメリカをはじめとする世界26カ国の主要都市へとビジネスを拡大している。
利用者は事前に専用アプリをダウンロードしてIDを登録しておく必要がある。名前、メールアドレス、携帯電話番号、カード情報を入力すれば準備は完了だ。タクシーを呼びたいときは、アプリを開き、ピックアップしてほしい場所をタップすれば、ほどなく配車される。配車までの待ち時間、車種やドライバーについての情報もアプリ上に表示されるほか、目的地までの見積り料金も事前に知らされる。これで、「タクシーがつかまりにくい」「ドライバーの接客が悪い」「料金が不透明」といった不満は解消される。その上、アプリ上で決済が完了するため、降車時に面倒な支払いを行わなくてすむ。
現在、東京六本木地区でもサービスが始められている。日本での需要、業界の規制、関連業界との連携など、どれだけビジネスを広げられるか未知数ではあるが、快適さを追求した斬新なサービスは、日本社会にいい意味での刺激をもたらしてくれるだろう。
●Square Wallet(Squareウォレット)●
もう一つ、興味を引き付けられたのがSquareウォレットだ。これはスマホだけで決済を完結させることができるサービスで、スマホ決済の先駆者であるSquareが行っている。これもウーバーと同様、事前に専用アプリをダウンロードしてアカウントを作り、名前と顔写真を登録し、クレジットカード番号を入力しておくと利用できる。すでに北米のスターバックス等でサービスは開始されている。
利用するときは、専用アプリを開き、表示されたリストから利用店舗をタップして入店する。そうすれば自動的に店側の専用レジ画面に利用者の名前と顔写真が表示される。店側はレジで利用者の名前を聞き、その名前と画面に映し出された顔写真を確認して決済ボタンを押す。それと同時に利用者にも確認メールが届くので、それを承認するボタンを押せば決済が完了する。カードやお金を取り出す必要はなく、暗証番号などを入力する必要もない。
店側に必要なデバイスもiPad程度。手軽に簡単に導入できるサービスだ。こちらもいずれ日本に上陸してくる予定だ。
●スマホですべてが“ワンストップ”●
サンフランシスコ発のいずれのサービスも、 売買から決済に至るまで“ワンストップで利便性が追及されている”ところに、発想力の高さを感じずにはいられなかった。
Squareの設立者であるジャック・ドーシーは、クレジットカード決済ができずに商機を逃してしまった友人の話から、「このデバイスで、銀行よりも力のある何かが作れるのではないか」と思いついたという。いまだ日本でのスマホの普及率(※)は25%、と73%の韓国、56%のアメリカと比べると低いため、スマホを利用したサービスの開拓は遅れ気味と言える。とは言え、ドーシーのような開拓者がでて、自らの発想で色々トライしてもいいのではないだろうか。
※Google(2013)「Our Mobile Planet」
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