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2019年11月19日 QRコード決済

LINEペイの大誤算…ヤフー統合を運命づけた「クレカ紐付け」問題

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QRコード決済“4強”が出揃った矢先に…

11月18日、Yahoo Japanなどを運営するヤフーの親会社・ZホールディングスとLINEが、経営統合することで基本合意したことが正式に発表されました。


同月13日に今回の経営統合話が報じられて以降、様々な記事が出ていますが、筆者は我々の日常生活にも密接に関係するであろうキャッシュレス決済(QRコード決済)の観点から、この騒動を考えてみたいと思います。

10月のキャッシュレス決済・ポイント還元事業開始から2ヵ月近く経って、QRコード決済の勝ち組も次第にはっきりしてきました。18日にユーザー数2000万人突破を発表したソフトバンク・ヤフーの「PayPay」を筆頭に、楽天の「楽天ペイ」、ドコモの「d払い」、それにLINEの「LINE Pay」の4強がそれに当たると思います。

そして、このうちのいくつかが自前のクレジットカードを持ち、それとQRコード決済を結びつけることで新たな魅力づくりに成功しています。この点はもっと強調されてよいと思います。
例えば PayPayは同じグループの「Yahoo! JAPANカード」と紐付けてあり、PayPayで買い物すればYahoo! JAPANカードのポイントが別途1.5%が付くようにしています。楽天ペイは「楽天カード」と紐付けて買い物すると1%貯まり、d払いも同じグループの「dカード」を紐付ければ1.5%貯まるというサービスを展開しています。


利用者からすると自分のクレジットカードをQRコード決済に直接紐付けたいのですが、一般カードではポイントの貯まりが少ない(またはゼロ)ので、どうしても指定のカードに目が行きます。QRコード事業者からすればそこが狙いで、この機会にグループのカードを一気に普及させようとしているのです。
いったん自前のカードを持たせてしまえば、QRコードの決済はもちろんオートチャージや公共料金の支払いも可能になります。そうすれば、いつの間にかメインカードに変わっている確率も高くなるというわけです。

こうしたやり方は2001年にJR東日本の「Suica」が登場し、そのSuicaにチャージする役目を同じグループの「ビューカード」が担った時から始まりました。
ビューカードは鉄道系クレジットカードの特権的な立場を生かし、Suicaのチャージの際に他社カードの3倍の1.5%のポイントをつけて圧倒。さらに今ではオートチャージのできる唯一のカードとして存在感を発揮しており、JR東日本グループに莫大な利益をもたらしています。

クレジットカードを重視しなかったLINE


こうした成功例を見るとキャッシュレス決済にとっては紐付けるクレジットカードがその命運を握るカギになっていることがわかるでしょう。ところが4強の1つ、LINE Payにはそうした発想がなかったのか、立ち上がりから今までカードに関しては、迷走を続けています。

LINEは独自のサービスが多いこと、韓国に本社があって日本の事情に疎いこともありクレジットカードをそれほど重視してこなかったと言えます。チャージの仕方についてみても、最初は銀行口座とコンビニでのチャージのみでした。

それが2016年3月に「LINE Pay JCBプリペイドカード」の発行を始めてから、カードへの対応をスタートさせましたが、これは、あくまでプリペイドカードであって、チャージの一手段としての位置づけでした。楽天カードやYahoo!カードのようにグループを支える「核」としてのカードという広い視点はなかったと考えられます。


LINEがクレジットカードの可能性に気づいて本格的な準備を始めたのは去年の暮れごろからでしょう。QRコード決済の盛り上がりに合わせるように、LINEは新クレジットカードの発行を宣言しました。

プリペイドカードはJCBブランドでしたが、今度のクレジットカードはVISAブランドを選びました。オリンピック対応のタッチ決済を入れて世界を睨んだ画期的なクレジットカードになる予定でした。「いよいよみなと同じ土俵に上がってクレジットカードの発行を始めるのか」と私は期待しました。
さらに、このカードは3%のポイントが付くお得なカードでした。プリペイドカードが2%でしたからさらに上積みをしたわけでこれは凄いと評判になったものです。そして、当然10月のポイント還元事業の前には出てくるだろうと期待しました。

手痛い誤算、迫られた方向転換


ところが、PayPayに対抗する形でLINE Payが「「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」を打った6月頃から、業績不振の声を聞くようになりました。
この300億円キャンペーンは、新規顧客を増やすのには貢献しましたが、既存顧客にはほとんどメリットがなく不評だったと言われています。無理が続いたのかもしれません。

そのしわ寄せがポイント還元率に現れました。3%と謳った高還元率のはずでしたが、いつしか初年度のみの限定サービスとなってしまいました。また新カードの発行は10月のポイント還元事業には間に合わず、来年1月ごろにずれこみそうだといわれています。これを聞いて私の期待も急速にしぼんでしまいました。


発行時期が来年というのは、LINEとしても痛かったのではないでしょうか。なんとしても10月前には新カードを出して政府のポイント還元事業に間に合わせたかったに違いありません。 それがなぜ難しかったかは想像するしかありませんが、カードビジネスについてはほとんど素人のようなLINEと百戦錬磨のカード会社+VISAとでは話にならなかったのかもしれません。

焦るLINEと周到なVISAの駆け引きの結果と言うことができるでしょう。 そうした手違いもあり、LINEは方向転換を迫られたのかもしれません。

そこで今回の経営統合の話に戻りますが、資金力が潤沢にあり、なおかつクレジットカードの知識も豊富なヤフーの助力を求めることになったのではないかと私は見ています。
ですから、このまま、発行が遅れるようならLINE PayのVISAカードの話はなくなるかもしれません。遅れれば遅れるほどLINEに紐付けるカードは 「Yahoo!カードで良いではないか」と言う声が強くなるからです。

ただ、今後はLINEとPayPayが一体となって、楽天ペイとの壮絶な戦いを展開すると思われます。楽天ペイは、来春に控えるSuicaとの連合で、新しい機軸を打ち出し、LINEとPayPayを迎え撃つとみられます。これは見応えのある戦いになるのではないでしょうか。

岩田 昭男

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