iD一体型dカードで攻めるドコモの戦略(利用者向け) ~順調に会員数を増やしているiD~
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電子マネーは、決済金額が5兆円を突破し、いよいよ本格普及の時代に入った。なかでも注目を集めているのがNTTドコモが2005年にサービスを始めた電子マネー「iD 」。
非接触ICを使って決済する方式は、スイカやWAONなどと同じだが、iDは、主にポストペイ方式で利用した後に代金を支払うのが特徴だ。
昨年12月の調べでは、iDの会員数は2357万人で前年比108%、リーダライタ(決済読取機)数も67.9万台で、前年比115%と順調な伸びを見せている。
加盟店急増の要因は何か?
iDの最大の強みは、なんといっても加盟店の多さだ。コンビニを始め、ファストフード店、大手飲食チェーン店、スーパー、家電、タクシーなどがあり、電子マネー勢力の中では加盟店の数が一番多い。以前のiDのターゲットは、ビジネスマンが中心だったが、今は主婦や若年層にも広がりを見せており、日常生活に密着したショッピングセンターやドラッグストアも増えてきた。最近では、ユニクロやマツモトキヨシなどが参加している。
このように加盟店が急速に増えている理由は、いくつかあるが、最も大きいのは、レジの処理速度が速いので、昼時のコンビニでも列を作ることがないという点だ。ポストペイは、クレジットカードと同じ後払いで、こちらは電子マネーのために、最初からサインは不要となっている。だから、混雑時には威力を発揮する。
さらに、「他の電子マネーはプリペイドなので、常に残高を気にしないといけないが、iDは後でクレジットカードと一緒に払えば良いので残高を気にせずに安心して使える」(ドコモ担当者)という長所もある。
とくに、ドコモが発行するdカードならiDとの一体型だからiDとクレジットカードの使い分けができる。iDが使えるお店ならかざしてお支払い、それ以外の場合は、クレジットカードにするといった振り分けができるので、利便性が高い。もちろん、加盟店が多く生活導線上の店でも使え、しかも、iDでもクレジットカードでもポイントがたまるので、気づけばたくさん貯まってお得と言う面も見逃せない。
店舗側のメリットは、単価があがること
一方、店舗としてもメリットは多い。レジの処理スピードが上がることを評価する声は高いが、それ以上に売り上げの単価が上がるという声がある。
大手のファストフードやコンビニ、スーパーでも現金払いに比べてiD払いは2割程決済単価が高くなっている。
とくにdカードの場合、iDとクレジットカードの両方が使えるのでそれぞれ食い合いになって売り上げが下がるのではないかと心配する声があった。ところが実際は食い合いではなく、新たにiDの取扱いを始めたスーパーでは、従来のクレジット利用客の売り上げにiD利用客の売り上げがプラスされるデータが出た。
「1ヵ月の平均利用回数は、iDは10回程度、クレジットカードはそれより少し少ないぐらいでした。普通に考えると月に20回程度の利用になるのですが、実際はそれを大きく上回って利用されています。iDは月に2回以上使うと、癖になるといわれていますが、電子マネーとクレジットカードがついていると相乗効果が出て利用が増えるようです。これは私たちにも意外でした」(ドコモ担当者)
こうした効果がはっきりしてきたから店舗の方でも積極的に導入を始めたと言うわけである。
店舗にとってはドコモはお客様を増やしてくれる重要なパートナーになりつつある。それは、iDとクレジットカードが両輪となってうまく機能しているからだが、Apple Payが始まって、ここでも同じことが起きているという。Apple Payの開始でiD、クレジットカードの上にうまくプラス・オンされて売り上げを伸ばしている。
プリペイドカードの発行をはじめた狙い
またクレジットカードは持ちたくないと言う人もいるので、昨年暮れにドコモは、プリペイドカードの発行も開始した。
このカードは年会費無料ながら、iDが搭載されている。コンビニやスーパーなど加盟店で利用できるほか、マスターカードのブランドも付いているのでマスターカード加盟店でも使えるのがメリットだ。プリペイドは審査が不要なため、誰でも持てるのが強み。街に出て、すぐにiDで買い物ができるから便利なのだ。
ソフトバンクもこのiDを搭載したプリペイドカードを採用している。ドコモとはライバル同士のはずだが、iDを使えるようにしたので驚きが広がった。Twitterでも「iDを犬のマークのカードで使えるようになってびっくり」という声が多かった。若者の比率が高いソフトバンクとしては審査不要のこのカードを出して顧客の囲い込みを図ろうとしている。
iDはもともとオープンなブランドであるためドコモとすればソフトバンクの動きは大歓迎である。またApple Payが上陸したこともこうした動きに拍車をかけているともいえる。
提携店はいずれもiD、dポイントで売り上げ急伸
また利用者にとってiD利用の動機付けとなっているのが共通ポイントであるdポイントの優遇施策。ドコモは「+d」と言う提携戦略をとっていてB to C、またはB to B to Cで様々な企業とコラボして、ポイント、割引でのおトク、安心、娯楽といったサービスを提供している。代表的なのが、ローソン、マクドナルド、髙島屋、の3社で、ドコモは、dポイントを活用したマーケティング支援を継続的に行っている。
日本マクドナルド
マクドナルドはdカードで支払うと3%割引され、100円につきdポイントが1ポイントたまるので4%お得だったが、東京地区限定で行っていたdポイントカード提示でのポイント進呈を3月1日から全国の店舗に拡大したので、5%お得になった。その結果、全店でのdカードでの売り上げが急上昇し、一時は前年比2倍以上増えたようだ。
髙島屋
髙島屋はドコモとの提携がぴったりあった。dカードの会員は30代40代が主流で両者の合体で、顧客の年齢層が高い髙島屋では、足りなかった年代の新規客が多く増えてdカードでの売上も大幅に拡大した。
ローソン
2015年6月からdカードの前身のDCMXで払うと3%割引を開始し、dポイントがスタートした同年12月からはさらに店舗で1%のポイントを付けることになった。dカードの利用は割引き実施前に比べて2倍以上に増えた。もともとiDが利用されるコンビニは、一位セブンイレブン、二位ファミリーマート、三位ローソンだったが、今は一位ローソン、二位セブンイレブン、三位ファミリーマートになったようだ。dカードで支払うと5%分お得になるので、お客が他のコンビニからローソンで使うようになった格好だ。
「+d」の取組みは、企業同士の戦略的提携という色彩が強いので、dカード、dポイント、iDだけでなく、様々な分野での協力体制をとっている。とくに決済、ポイント分野への期待は高く、提携企業にとっては魅力的である。マクドナルドのように自社のマーケティング戦略との相乗効果をみせたケースもでてきた。マーケティング施策としては、極めて効果的といえる。
また、ドコモは数々のキャンペーンで利用者への還元をおこなっており、見逃せない。
スマホの特長を活かして次々と新しいサービスを生み出しているドコモ
ドコモが携帯電話事業者として力を入れているのがdカードとスマホとの連携である。そのキーワードとして、「リアルタイム(即時性)」と「見える化(視覚化)」の2つを掲げている。
◎ポストペイながら利用金額を瞬時に表示(リアルタイム化と見える化を実現)
一般のクレジットカードでは店での利用履歴はリアルタイムでは見ることができないが、dカードはスマホアプリの「dカードアプリ」によってリアルタイムで利用履歴を見ることができるので使いすぎの心配がいらない。
◎ポイントも都度反映する(リアルタイム化と見える化を実現)
これまでは1か月の利用金額に対してポイントがついたが、dカードでは買い物の都度反映されるようになったので非常に便利だ。都度進呈されるポイントの確認もスマホからdポイントクラブのアプリですぐに確認できる。
◎ Apple PayのTouch ID の利用(安全、安心を実現)
2020年を目指してEMV対応とか、PCI DSSとかマスコミでは、いろいろいわれているが、利用者としてはApple PayのTouch IDが便利。ボタンに指をかざすだけで、指紋認証ができるからだ。これまではスマホを落としてしまえば、すぐに他人に使われる心配があったが、Touch IDでプロテクトされているから不正使用はできないのだ。これは実感としてわかりやすい。こうしたApple Payの機能も手伝ってiDの魅力もdカードの魅力も高まるだろう。
iDの良さは技術の進歩とともにいろいろなデバイスに積極的に入って行くことだ。クレジットカード、プリペイドカード、モバイル、Apple Watchと、次々出てくるデバイスに敏感に対応して利用シーンを拡大している。機能面でもポストペイだけでなくプリペイドも出てきて後払いにも前払いにも対応している。また、Apple Payについては、Apple Watchといったウエアラブル機器への対応も実現して新しい展開も見えている。これからは利用者のそれぞれのニーズに合わせて好きなiDを選ぶ時代になりそうだ。
以上ざっとiD一体型のdカードについて述べてきたが、iDはこれまで以上に使いやすく便利になった。これまで1回使ったものの機種変更などでiDを辞めたと言う人も、もう一度見直してiDを使ってみてはいかがか。まるっきり違う新しい電子マネーとなって生まれ変わっている。使わないのはもったいない。
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