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2015年12月7日 岩田昭男が探る

キャッシュアウトの解禁

「亡霊が甦ったのか」と思った。報道によると、金融庁はキャッシュカードを使って店のレジから預金を引き出せるサービスを開始するという。ATMに行かなくても、街の商店のレジから自分の預金を引き出せるので、ATMが近くにない時などは非常に便利である。これはキャッシュアウトというサービスで、デビットカードに付帯するサービスとして欧米では広く利用されている。デビットカードというのは、ご存じのように買い物をすると銀行口座から即時に引き落としになるカードでキャッシュカード機能をもっているものも多い。日本では2000年にゆうちょ銀行とみずほ銀行が中心となってJデビットのサービスを開始している。一部銀行を除いてほとんどの金融機関が参加しているので、恐らくみなさんも手持ちのキャッシュカードを使えばそのまま買い物はできるようになっている。しかし、Jデビットが普及しているかといえば、それほどではない。クレジットカード会社の協力が十分に得られなかったことや加盟店数が少ないこともあって、ここ10年間、大きな伸びはみせていない。その苦境を打開するために、何度もキャッシュアウト解禁の話はでていた。キャッシュアウトを導入することで、ついで買いを誘ってデビットカードの取扱高を増やそうという狙いであった。だが、そもそもデビットカード導入の目的が、現金主体の日本を早くキャッシュレス化させることにあったために、レジに大量の現金を置き、現金を手渡すというサービス自体、当初の目的に反するという声があがった。さらに、防犯面からも不安が大きいという声もあって、却下された経緯がある。だから、これはもう完全になくなった話と思っていたのに突然、浮上してきたので「亡霊が甦った」と思ったのだ。

それにしても、あんなにやらないといっていたものが急にやろうとなった理由は何だろうか。私が予想するには以下だ。
①主体となっているゆうちょ銀行が今期上場したことである。これまではまだ半官半民のようなところがあったが、上場したら一民間企業として儲けを考えねばならない。それには何でもやる必要がある。キャッシュアウトもそのひとつという理由だ。

②同じデビットカードでもビザが発行するビザデビットカードの普及が目立つようになった。欧米ではすでにクレジットカード以上にデビットカードが普及しており、大きなシェアを誇っている。今のうちに手を打っておかないと日本もビザデビットなどのブランドデビットに席巻される恐れがあると考えた。ブランドデビットの場合は、クレジットカードのネットワークをそのまま使うので、ビザの場合、世界3000万の加盟店で利用できるのだから、汎用性では太刀打ちできない。そこでビザがまだ準備のできていないキャッシュアウトをやろうとしたのではないか。

③みずほはリテール・バンクとして全国へのATM設置や利用促進を図っている。これまではイオン銀行などと組んでATM設置に注力して展開していたが、それでは足りないというので、加盟店単位で現金が引き出せるようにしたのではないか。これはビザデビットでワールドワイドに展開しようとする三菱東京UFJ銀行に対抗する施策といえる

そして、参入するからには当面のライバルとなるATMにできないこと、手数料を無料にして魅力づけしようと考えたのだ。現状ATMの利用者は多いがみな高い手数料を取られるのに不満を感じているので、「店に行ってキャッシュアウトすれば手数料は無料だよ」というメッセージは十分刺さると考えたのだろう。さらに金融庁は別の視点で考えているのかもしれない。もう少し長いスパンで考えている。高齢化社会、過疎化社会への対応である。地方に行くと、高齢化、過疎化が広がり、ATMの台数も少なく、金融機関の数もどんどん減っている。そういう所で暮らす人にとっては、現金の引き出しが自由にできないことが悩みのタネとなっている。ATMを増やせば問題は解消するといえるのだが、金融機関も採算を考えてそこまでは踏み切らない。その代替策として考えられたのがこのキャッシュアウトではないだろうか。キャッシュアウトが一般化すればATMを設置する手間もなく、また店の売上げもあがる可能性があって、一石二鳥のサービスと考えることができる。

こうした観点から国が動きだしたのではないかと私はみているが、一方で、そこまで考えてももう半面の問題が残るのだ。レジに現金を常にプールしておくというのは強盗に入ってくれというのと同じである。さらに老人のキャッシュアウトに対する理解が進まなければ、キャッシュアウト詐欺にあう危険性がでてくる。老人を騙してキャッシュカードと暗証番号を聞き出せば、近くの店に行って、老人に成り済まして、口座から現金を引き出して逃げるといった犯罪が増えるのが心配になる。いずれにしろ、キャッシュアウトに関しての金融庁の対応に注目したい。

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